子どもたちが、サッカーを“楽しみ”ながら成長できる環境は整っているか?【8月特集】

2019年08月07日

育成/環境

トーマスカップ

次の年代へのつながりは人間教育にも関わる

——「そこにいなきゃいけない」がために、試合に出るという経験を切り捨てている部分はあります。切り捨てられているという表現が当てはまっていることも多いです。

悠紀「結構、深いテーマですね」

——結局、サッカーをやっていると、小学校から中学校に上がる時に、同じ地域のところから選手が集まって、でも高校になるといろんな地域から集まってきて、大学になると全国から集まってきて、そして、社会としてつながっていく…そういうところがサッカーに限らずスポーツの良さだと思うんです。

 子どもの成長とは何か? 
 
 縦軸横軸の関係で言うと、チーム同士の横軸でつながり合いながらも、次のカテゴリーに進んだ時にもそれが成り立たなければ意味がないんです。小から中、中から高、高から大へとつながりが持ち合いながら成長していくことでそれが社会までつながっていくけど、それぞれのカテゴリーだけの単体で物事を捉えてしまっている部分があるから、結果的にそこだけの積み上げで終わってしまい、社会にどうつながっているのかが見えずにサッカーというスポーツが自分の中で『何なのか』というのがわからずにやっているのかなと思います。

 プロなんて一握りしかなれない。ならば『社会に入るための過程』だと考えると、それぞれのカテゴリーで自分が何のためにプレーしているのかがわからないと、社会に入った時に役立つものにならないし、結果それがゆくゆくは生涯スポーツという形でそのスポーツが自分の中で残っていかないのかな、と。

 成人した一人の選手を育んでいくためには、絶対に心と体の発育発達を考えなければいけません。その時の実力だけで人間の発育発達が度外視されている部分があるから「うまいかそうでないか」「強いか弱いか」だけで収まってしまっているのではないかと思うんです。

悠紀「どうしても結果主義なんですよね。育成主義じゃなくて、結果主義。どこも育成と言うけれど、結局はどうやって勝つかという結果だけで評価してしまっています。最近『うちは選手をなるべく使います』みたいなクラブも増えていますが、本来ジュニアでは特に当たり前の世界です。

 例えば、ジュニアユースの公式戦では試合後の3本目に出場機会のなかった子たちを出して『対外的に試合に出場させています』とうたっているチームもあります。もしくは練習試合だけは出し続けて、公式戦はそうではないのに『均等に出場させています』と言っているチームもあります。そういうことをしている時点で、やはり結果主義からは抜け出せない。

 これまで多くの選手を見てきましたが、サッカーがうまい以前に、いろいろな経験をしてきた、人間として成熟した選手のほうが、最終的には伸びていく傾向があります。やはり『トータルとしての人間教育が大事』なのかな、と。レクリエーションの話からは、少し離れてしまいますが、あらためて、育成は選手の技術を伸ばすだけでは足りないんだなと感じています。

——よく「うちはサッカーだけじゃない」みたいな言い方をしながらも、フタを開けてみると練習試合や3ピリオド的な試合だけ起用して、結果的に「試合に出しました」というアリバイ作りを行っているクラブは全国的に見てもまだたくさんあります。公式戦だからこそ得られる子どもの成長を度外視して。

悠紀「それがスタンダードになっていますよね。評価対象が『結果』ですから、そこが変わらない限りは…。評価がプレーの内容じゃないですよね。でも、どうなんですか、日本では学校もそうなんですか? 例えば『良い先生』とされる先生は生徒の成績を上げられる方が良い先生なんですか? 私は日本の学校に通ったことがないのでわからないんですけど」

——塾はそうだと思います。でも、どうだろう? やはり学校も話がおもしろい先生、いわゆる忖度しながらの人気取りではなく、授業そのものがおもしろい先生が良い先生みたいなところは昔からあるかもしれませんね。

悠紀「サッカー界もそうなればいいですよね。そうすると、学業面での評価でいえば塾寄りなのかもしれないですね。サッカー塾だから結果を出してくれる指導者が良い指導者みたいな。私の『良い悪い』の基準は、どれだけその子と向き合って、その子のために物事を考えることができるかです。

 育成指導者にとってはそれが一番難しいところです。

 みんな『自分のため』になりがちなんですよ。ある意味、自分は一回置いておかないとダメだと思うんです。ここがまた難しいところです。サッカーは個人スポーツではないので、一人の子どものためにやることが、もう一人の子どものためにならないということがザラにあります。そのバランス加減が難しい。なるべく全体の子どものためにプラスになるようにと、その時に一人の子どものためにプラスになることを導き出せると子どもはものすごく成長するし、そういうことが社会へとつながっていくんじゃないかなと思います。

 組織作りとしてはもっと小学校から中学校、少年団でも提携先のジュニアユースを持つとか、そういう仕組みを作ったほうが子どもの成長のためにはなりますよね。ドイツは逆パターンです。そもそも基本的にスポーツクラブという在り方があって、その中でいろんなスポーツがあって、いろんなカテゴリーがあって、その中に地域の子どもたちが選んで入っていきます。先に枠組みがあるというか。

 でも、日本はそうではなくて『事業としてサッカーをやろう』として、そうすると『どの年齢層が多く来るから』などとビジネス的な要素も入ってきて、『だったら、うちはジュニアだけにしておこう』『ジュニアユースだけに絞ろう』と。そうなってくると、小学校から中学校、中学校から高校とつながり合いを持つということには、いつまでたっても向かいません」

>>インタビュー第二弾は8月14日(水)の配信予定


【8月特集】育成のオーガナイズに目を向ける


<プロフィール>
シュタルフ悠紀リヒャルト
1984年8月4日生まれ、ドイツ・ボーフム出身。14歳で地元のサッカースクールでコーチのアルバイトを始めたことをきっかけに、プレーの傍ら、主に育成年代で20年間指導。現役引退後は自身が代表を務める会社が運営するレコスリーグの選抜チームである「レコスユナイテッド」やドイツのSVヴェルダー・ブレーメンと育成提携している「日独フットボール・アカデミー」で指導。2016年には世界各国の育成専門家が集うベルギーの育成コンサルティング企業「ダブルパス」と業務提携を結び、Jリーグ全54クラブの監査とコンサルティング業務に携わる。ドイツ・サッカー協会公認「A級(UEFA A級)ライセンス」、日本サッカー協会公認「S級ライセンス」を取得。2019年には「Y.S.C.C.横浜」(J3)トップチーム監督に就任し、日独フットボール・アカデミーでは育成ダイレクターを務める。


 

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