子どもたちが、サッカーを“楽しみ”ながら成長できる環境は整っているか?【8月特集】
2019年08月07日
育成/環境「育成は、答えがないから厄介だ」。サッカー指導者であれば、そんなことを感じたことがあるかもしれない。子どもには、一人ひとり個性があるし、サッカーも日々進化している。自分が正しいと信じて指導している方法も、15歳の子どもにとっては最適な指導方法だとしても、10歳の子どもには適していないかもしれない…。現実、そういった事例はよく見聞きする。8月の特集は「育成全体のオーガナイズ」がテーマだ。この難題を、J3・Y.S.S.C.横浜で監督を務めるシュタルフ悠紀氏にぶつけた。
【8月特集】育成のオーガナイズに目を向ける
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部
シュタルフ氏 新著『プレーヤータイプ別診断トレーニング』 1/19発売!

なぜ学生スポーツは上を目指すだけなのか?
——8月の特集では、「育成全体のオーガナイズ」というテーマで各カテゴリーのつながりなどの話ができたらいいなと考えています。そもそも世界の共通点として「18歳までにどういう選手に育てていくか」は、いろんな国の育成事情を取材してきて「国を問わないもの」だと感じています。しかし、日本では指導者自身の経験則の中でしか選手を見られない、しかもジュニア、ジュニアユース、ユースとそれぞれカテゴリーだけを見てサッカーを教えている人が多いので、選手が大人になった時に 「あれ? この部分が抜けていない?」とか、指導者自身も「もっと、これを指導しておけばよかった」とか、それぞれが経験を重ねるごとに感じることが多いような気がします。まず、18歳までに「どう育てていけばいいのか?」と、そういう話が展開していければと思っています。
悠紀「それは『プロアスリートとして育てる』というイメージでいいのですか? レクリエーション的にサッカーを楽しむ選手を育成するのとでは違ってくると思うんですよね」
——私は、「レクリエーション的な考え方」をイメージしています。生涯スポーツ的な言い方もできるというか。例えば、大人になると時間がない中、テニスとか、卓球とか、夜のジョギングとか、自分なりのスポーツの楽しみ方をわかって楽しめています。でも、なぜか、18歳までの学生時代は上を目指すことだけしかないような感じになっています。私は、その現象って変だなと思うんです。大人がそういう楽しみ方を知ってるんだったら、その大人が「こういう楽しみ方もあるよ」と「18歳までのスポーツの在り方」として子どもに伝えたり指導したりしてもいいんじゃないかなと感じているんです。
悠紀「たぶん、その学生時代のスポーツの在り方は日本特有のものですよね。ドイツだったらレクリエーションというスポーツの在り方は小さい頃から存在します。ガチでやりたい子はプロクラブのアカデミーや、地域のレベルの高いチームを目指します。レクリエーションとして友だちとサッカーをプレーしたい子たちは、地域の街クラブに入るし、そこでは練習頻度が多いわけではありません。そして、その環境は大人までずっと続いています。
すごく実力があるけれども、『僕は週4の練習はちょっと…』という子は7部や8部のチームでプレーして楽しみますから、そういうスポーツの付き合い方をします。だから、そもそもの環境が日本とは違いすぎます。やはり、育成の現場でも、それが違いとして表れているんだろうなということはすごく感じるところです。
7月1日のジュニサカさんの講習会の中でも話をしましたが、人間という生き物の学習プロセスは、少しずつ段階を経て学んでいくものです。それは『人間の発達発育プロセスに比例している』というのは、まず間違いないと思うんです。極端な話、赤ちゃんの頃にものすごくできていたものが、大人になるに連れてできなくなることはたぶんほとんどありません。
基本的には、語学にしても何にしても成長していくに連れてレベルアップしていく、より難しいものができていくのが普通です。そういった中で学校教育があって、学校教育はどこの国もある程度の水準に到達するには、やはり小学1年生からの積み上げで高校卒業まで導いていき、社会に出ても対応していける基礎知識を身につけさせるようになっています。
私はスポーツもその考え方は一緒で、国によって学ぶ内容が違うだけだと思うんです。コンテンツは違うけれど、方法論としては同じです。でも、日本のサッカーにはそのカリキュラムというのがほとんどありません。そして、その一貫性が取れる組織形態も少ない。小学校という区切り、中学校という区切り、高校という区切りがあっても、それぞれが必ずしも一貫していません。
例えば、U-8くらいの年代からU-18年代まで全カテゴリーのチームを保有しているクラブは、Jクラブくらいです。同じ組織の中でやれば、ある程度の一貫性は取れるかもしれませんが、日本はそういう組織形態、プレー環境が整えられていないから、先ほど言われた『覚え漏れ』とか『教わってない』とかという現象が起こるのだと思います。
どこのカテゴリーも、そのカテゴリーがトップチームみたいな成り立ちになっているというか。ジュニアまでしかない少年団では、6年生がトップチームなわけだからそのトップがいかに功績を残していくか。中学校の強豪のサッカー部は、U-15リーグや大会でどう結果を出していくか。高校では、例えばプレミアリーグや高校選手権でどう結果を残していくか。
そもそも論になってしまうのですが、『日本の育成って育成目線じゃない』ですよね。少なくとも、サッカーに関してはそれが海外との違いとして大きいなと思います。仕組みのところでは、そういった一貫性をもっと作ることだったり、その中で選手にチョイスできる環境があるのが理想ですよね。レベルに合ったチームを選べる環境ができることが理想ではないでしょうか」
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