U-11年代の大会で見えた“不必要な緊張感”から解放されたプレー。子どもたちにとって適切な成長とは何か?
2019年09月11日
育成/環境大切なことは選手がアイディアを出し切ること
まず、ポルトガルのU-11年代は7人制サッカーで試合を行うそうだ。だから、8人制サッカーを体験するのは今大会が初めてなので、大会前日に同年代の湘南ベルマーレのチームと試合をしたという。だが、今大会の試合内容におけるスポルティングCPの評価は、日本のチームより確実にいい内容だった。それは個人の技術においても、チームとしてのサッカーにおいても差があった。その背景には、彼らが大切にしているクラブ哲学が潜んでいる。
「サッカーのことも大事ですが、我々がクラブとして大事にしているのは性格です。それぞれに対するリスペクト、ピッチ内外のことを100%でやることを大切にしています。身につけているワッペンに感謝し、それに恥じない精神を持つことを最も大切にしています。サッカーのことを言えば、特に戦術的に決まったことは口にしていません。私が監督として伝えているのは『ボールを持っている時のアイディア』。試合の状況によって、どのように目の前の敵、またグループを崩すかを重要視しています。このクラブに所属する選手として、どこで見られていようとも『スポルティングCPの選手は自由に楽しくサッカーをプレーしているな』と感じてもらえるのがクラブ哲学です」
監督が強く主張していたのは二つだ。
・スポルティングCPの選手としての自覚
・アイディアをプレーで表現すること
彼らのサッカーは、ボール保持者がしっかりと自分のアイディアをプレーで表現しながら周囲の選手たちがそれに呼応するように流れていく。ディフェンスラインではボールを左右に動かしながら落ち着いて前進し、ミッドフィルダーやフォワードに確実にパスをつなぐ。そこからミッドフィルダーやフォワードにパスが渡れば、まずゴールに向かってボールを進める。そうして中央に相手ディフェンスが集中したところで幅を作っていたサイドの選手が背後か足下かでボールを受ける。そこから先はゴールに対して自由に仕掛ける。もちろんボールを奪われたら即プレスをかけるし、即基本システムに基づいた立ち位置にポジションを取る。その中で、それぞれの選手が自らの武器を生かしながらアイディアを形にしている。
きっと、こういう基本的なサッカーを全員が理解しているから、7人制から8人制に変わってもいつも通りのプレーができるのではないだろうか。
だが、自由やアイディアを大切にすることでチームとしてのまとまりや規律が守られない可能性は出てくるが、そこはチーム全体で共有するスポルティングCPとしてのクラブ哲学があり、それに基づいて育成しているからこの年代では細かい戦術よりも「まず、個人がアイディアを出す」ことを優先しているようだ。単独インタビューの中で、監督に「個人のアイディアとは、ボールを持っていない選手に対しても求めているのか」とたずねると、こう答えた。
「チーム全体のバランスとスペースの取り方で、私たちはボールを持っていても持っていなくてもいろんな選択肢がある上でサッカーをしようとしています。ゾーンやエリアによって選手たちはいろんなアイディアを持っているから、当然それらを周囲も理解しながらプレーしようと努めています」
今大会ではあまり取材時間がなかったため、通訳をしてくれた中島ファラン・パリス氏にポルトガル人が大切にしていること、そして、スポルティングCPの監督が大事にしていることを追加取材した。
「私も留学のアテンドをしたりして何度かポルトガルに行ったり、スポルティングCPとも仕事をしたりしています。その経験の中で言うと、基本的にポルトガルの育成は会話を重要しているようです。彼らの中で『答えがない』はありえません。正解か不正解かではなく、個々にアイディアがあるどうか。だから、意思や意図のないプレーには意味がないと怒りを出すシーンを目撃しています。子どもたちも質問されたら『こう思った』と伝え、そこからコーチが『じゃあこの場合は?』と枝葉を派生させながら選手の考えを引き出していきます。彼らはきちんと考えていたことを評価し、その過程で会話が続かなかったとしてもその後は何も言いません。それがその選手の現在地だから。今回のスポルティングCPの監督もそうですが、『またそこから成長すればいい』というつながりを見ているんです」
これらの言葉から読み取れるように、ポルトガルでは子どもたちの適切な成長に目を向けていることがわかる。そして、選手の主体性を重んじていることが伝わってくる。だから、彼らのサッカーには感情がある。それは単なる喜怒哀楽という意味ではなく、例えば、ボールを動かすテンポ、失敗した後の全体的な切り替え…チーム全体が意思を持ってサッカーをしているように感じる。
彼らの試合は「ShonanBellmareFC」で無料配信されている。一試合ではなく、ぜひ数試合を通して観戦してほしい。きっと、たくさん得られるものがあるはずだ。
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