大迫勇也は18歳の頃から「ブレないメンタル」を持っていた。岩政氏が感じた“決して怯まない姿勢”
2019年11月28日
メンタル/教育試合の中では多くの1対1があるが、勝負はオフザボールの駆け引きから始まっている。特にゴールに直結しやすいCBとFWのマッチアップは、90分間絶えることなく、駆け引きをし続けている。それはトレーニング中でも同じだ。今回は元日本代表岩政大樹氏が鹿島アントラーズ在籍時のトレーニング中に、当時若干18歳だった大迫勇也との駆け引きから感じた世界で戦う日本のエースが当時から兼ね備えていた“メンタルの強さ”に迫る。
『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』より一部転載
著●岩政大樹 写真●Getty Images
18歳の時点で邪魔をされてもブレないメンタルを持っていた大迫勇也
その面で、思い出深いのが、同じ鹿島に所属していた大迫勇也選手です。今や日本代表のエースとなりましたが、新人の頃から、今の成長ぶりがうなずけるメンタルの持ち主でした。
「超高校級」という触れ込みで鹿島に加入してきた大迫選手は、練習からその片鱗を如何なく発揮していました。それ自体は大したことではありません。新人で入ってきたばかりの選手は、みんな自分の良さを出そうと躍起になり、最初は思い切りよくプレーできるものです。
それよりも、大迫選手に「違うな」と感じたのは、私が心理面の揺さぶりをかけてみたときでした。
確か、紅白戦でマッチアップしていたときだったと思います。私はすでにプレーヤーとして厄介だった大迫選手に対し、厳しくチャージをしました。正当なプレーだったと思いますが、大迫選手は少しイラっとしたのでしょう。その次にボールが入るところで私に必要以上に強く体を当てて挑んできました。
「おっ、やるな」と思いましたが、私も怯んではいられません。対抗して、私も必要以上に強く当たっていきました。紅白戦とはいえ、真剣勝負です。私たちはお互い一歩も引きませんでした。
紅白戦が終わり、私は一声かけにいきました。「お互い謝ろう」と。汚いプレーではお互いありませんでしたが、必要以上に当たってしまったことは事実でしたから。
しかし、大迫選手はそこでも一歩も引かなかったのです。「別に悪いことはしていません」という感じで取り合おうともしません。
私もだいぶ粘りましたが、途中で折れ、引き下がりました。大迫選手は今でこそ日本代表のエースですが、当時は18歳の“若造”です。一方の私は鹿島アントラーズで試合に出続けているとき。「だから」というわけでもありませんが、そこまで私の強気に強気で返してくるとは恐れ入りました。自分が進む道を真っ直ぐ見据えて、そこに邪魔が入ってもブレてしまうことのない強さを私はその時の大迫選手に感じて、「この選手は必ずフォワードとして成功するだろう」と思いました。
心理面の揺さぶりが全く通用しないフォワードはディフェンダーからするとやりづらいものです。何をしてくるか分からないからです。ディフェンダーは、相手を少しでも知りたい。しかし、大迫選手と対峙する相手はそれができないだろうと思いました。私は、前述したトップレベルのストライカーたちと同じような印象をそのときの大迫選手に感じたのです。
「メンタルの強さ」とは一概にどんなものとは言えないものです。その強さの意味は、私が対戦してきた素晴らしい選手たちはみんなそれぞれに異なりました。
言葉にすれば「自分を持っている」ということなのだろうと思います。相手が駆け引きを挑んできてもブレない強さを自分なりで持っているということでしょう。
※続きは発売中の『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』をご覧ください。
<プロフィール>
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年1月30日生まれ、山口県出身。東京学芸大から鹿島アントラーズに加入し、2007年からJリーグ3連覇に貢献した。3年連続Jリーグベストイレブンに選出された。2010年南アフリカW杯日本代表。13年に鹿島を退団したあとタイのテロ・サーサナ、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCを経て18年に現役を引退。ベストセラーとなった『PITCH LEVEL』(KKベストセラーズ)でサッカー本大賞2018受賞。解説や執筆を行うかたわら、メルマガ、ライブ配信、イベントを行う参加型の『PITCH LEVEL ラボ』を開設するなど、多方面に活躍の場を広げている。
【商品名】FOOTBALL INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする
【著者】岩政大樹
【発行】株式会社カンゼン
【判型】四六判/304ページ
【価格】1,600円+税
【発売】2019年3月18日発売
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