コーチも“チャレンジ”できているか?全国大会常連の街クラブの指導論

2020年02月05日

育成/環境

2月の特集は「街クラブのコーチに選手育成を聞く」と題し、センアーノ神戸を取材した。この企画はシリーズ化して全国の街クラブを紹介しようと思っていたが、担当の木之下が3月までの契約のため、今回限りとなった。ただ、このクラブは兵庫でも安定してベスト4に位置し、12月に鹿児島で開催された「全日本U-12サッカー選手権大会」でもベスト4に進出。2016年にはバーモントカップと全日本の二冠を達成し、その育成手腕を証明している。そこでU-12の監督を務める大木宏之氏に話をうかがった。

【2月特集】街クラブのコーチに選手育成を聞く 〜センアーノ神戸〜

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之


センアーノ神戸

チャレンジできるコーチでいることの大切さ!

 センアーノ神戸を取材したのは、2016年が最初だった。監督をしていた大木宏之は当時から私の質問に気さくに答えてくれながらも、試合では策士として勝負に関わる情報に対しては口が固かった。そういう勝負にこだわる姿も物書きとして「おもしろい」と感じていた。何よりJリーグだろうが、全日本U-12サッカー選手権大会だろうが、サッカーが1点を競い合うスポーツである以上、勝負へのこだわりを捨てることはありえない。

 この監督との緊張感ある関係が、4年前の全日本優勝後にこのコラム「フットサルとサッカーで日本一となったセンアーノ神戸。全少で見せた“個の質”とその先にあるグループ戦術の課題」を書かせた。

 それまでもジュニアサッカー情報を扱う仕事をしていたが、自分の名前でコラムを綴ることは控えていた。なぜなら日本の育成事情をきちんと幅広く取材することなく、また世界での立ち位置を知ることなく、自分が思う課題点や修正点を読者に納得させられないようなレベルでは、自分が意見してはダメだと思っていたからだ。実は、このコラムはジュニアサッカーに対して寄稿した初めてのコラムである。

 基本的に、私が署名で言葉を操る原稿は良い内容ばかりを並べ立てない。課題点もしっかりと記す。そのため、やはり題材となるクラブやコーチとは信頼関係が必要になる。4年前の優勝後のコラムを読んでもらうとわかるが、「マークの受け渡し」について課題があることを指摘しているが、数ヶ月後に東京から神戸へ取材に行ったとき、大木は記事の感想をこう述べた。

 「完全に見破られていましたね。本当におっしゃる通りです。子どもたちがマンマークを決めたんですが、途中からスペースの穴ができ始めて横浜F・マリノスさんにそこを突かれていたんですよね。なんとか上手にごまかしながらやれてよかったです」

 このとき、「素直に足らない部分を認められる人なんだ」と思ったことを覚えている。あれから4年が経ち、昨年5月のチビリンピックで久しぶりにセンアーノ神戸のサッカー、そして大木の指導を見たときに正直驚いた。それはチームとして目指すサッカーを細かく落とし込む姿が見られたからだ。

 ジュニアサッカーの多くのコーチが子どもたちに「チャレンジしろ」とは言うものの、自分が「チャレンジしているのか?」と問われると微妙な場合が多々ある。しかし、大木の「外から中に」というプレッシングのコーチングを耳にしたとき、「自分自身も失敗を繰り返しながら進化することを恐れない人間なんだ」とうれしくなった。

 そして、大木の指導を受ける選手たちも、大会中にどんどん成長して結果的に日本一に輝いた。コーチのサッカーに対する姿勢は間違いなく子どもたちに伝播する。これまで全国各地、また世界各国のジュニアチームを目にしてきたが、いいチームには「失敗を成功の一部ととらえてチャレンジし続けられる」という共通点がある。選手がサッカーに対して真摯である以上に、コーチが真摯で、様々なことに対して貪欲であることはこの年代にとっては重要な要素だ。

センアーノ神戸

8人制サッカー云々の前にサッカーを指導する

 もう4年前になるが、センアーノ神戸の練習を見学したことがある。(参考記事

 3・4年生のトレーニングだったのだが、インテンシティの高さに驚いた。コーンを横に倒してのドリブル練習、守備が間合いをつかみ続ける1対1でのドリブル練習、ボール奪取ありゴールなしの1対1、20m四方ほどにマーカーゴールをいくつか置いた通過ゲーム、最後に縦長の長方形の横軸にゴールを2つ設置して攻守に分かれたゲーム。練習メニューの内容より子どもが披露するプレーの質の高さに目を奪われた。

 足下のボールを扱うテクニック、相手との駆け引き、一人ひとりが個人のベースアップに向き合いながら、大木がグループとしてボールがないところでのプレーの関わり方を攻撃と守備の両面から問いかけ、選手全員がうるさいほど答える様子にセンアーノ神戸の指導のすばらしさが凝縮されていた。

 この取材は「8人制サッカー」がテーマだったため、夏に優勝したバーモントカップのことを聞くと、「フットサル用の練習は一度もしたことがありません。もちろん、ルールを知るために何度かフットサルの試合はしましたけど」と語っていたが、昨年の全日本では「3年生くらいまでにはフットサルもやらせています」と導入したことを教えてくれた。

 4年前、大木に「11人制サッカーへの移行をどう思いますか」と投げかけると、こんな言葉が返ってきた。

 「私は両方やればいいと考えています。8人制、11人制、フットサル、いろんな経験をさせて、どこでサッカーをやっても通用するものを身につけさせたほうがいい。子どもたちのサッカーセンスが広げて磨くのが一番ですからね。ただ一つ言えるのは、ゴールのサイズだけです。これは配慮すべきだと感じています。正直、6年生になったらフルサイズのピッチで 11人制サッカーを経験させるべきだと思います」

 そして、1人審判に対しては次のような意見を持っていた。

 「個人的に、1人審判には賛成です。街クラブはスタッフが足りないから主審と副審の3人体制にされると、選手に手をかける時間が削られます。学年によっては3チーム分の選手がいて、うちはどのチームも試合数を平等にしています。全国大会は別ですが、基本的に試合には全員を出場させるようにしています。そのため、もし3人での審判制度になると帯同できるコーチがいなくなってしまうため、子どもたちの試合数が減ることになる。そういう意味でも、私は8人制に賛成しています。ピッチもこれまでのもので2面作ることができるし、帯同スタッフが一人二人で済めばチーム単位で行動がとれる。そうすればいろんな子の育成ができます」

 少子化の波がどんどん押し寄せ、地方の街クラブにとっては選手もそうだが、コーチングスタッフの確保も課題の一つだ。だからこそ1人審判には未だに賛否がつきまとうが、この意見は「4年後の今も変わっていない」という。さらに付け加えていたのが、「審判との駆け引きで、身をもってオフサイドラインの限界値を覚えられる一面もあると思う」とコメントしていた。サッカーコーチとして一つひとつのルールに対してメリットとデメリットをすぐ明確に答えられるのは、やはり指導力が高い証拠だ。

 来週からは、大木に自分たちのクラブの歴史や取り組み、神戸周辺のジュニアサッカー事情なども話をしてもらいたい。

>>2月特集の第二弾は「2月12日(水)」に配信予定


【プロフィール】
木之下潤(文筆家/編集者)
1976年生まれ。福岡県出身。様々な媒体で企画からライティングまで幅広く制作を行い、「年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「グアルディオラ総論」(ソルメディア)などを編集・執筆。2013年より本格的にジュニアを中心に「スポーツ×教育×心身の成長」について取材研究し、1月からnoteにてジュニアサッカーマガジン「僕の仮説を公開します」をスタート。2019年より女子U-18のクラブカップ戦「XF CUP」(日本クラブユース女子サッカー大会U-18)のメディアディレクター ▼twitternote


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