フィジカルやスピードは焦らずに、今は判断力を身につける ~ワーチャレ取材日記②~

2020年12月29日

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020

「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020」は11人制のフルコートで試合を行います。普段8人制で行うことの多いジュニア年代の選手たちは、11人制で生じる課題をピッチ上で解決していかなかければいけません。その際、指導者はどのように選手と向き合っていけばいいのでしょうか。東京ヴェルディジュニアの松尾洋監督に「小学生のフルコートを使った11人制サッカー」について話を伺いました。

取材・写真●山本浩之


11人制での課題をピッチ上で、どう解決するのか

 12月28日(月)、「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020」は予選リーグ2日目を迎えました。福島県楢葉町のナショナルトレーニングセンターJヴィレッジは好天に恵まれ、空気はひんやりとしているものの、サッカーをプレーするのには良好なコンディションです。

 第1試合のキックオフは午前9時。人工芝のピッチに散らばる両チーム22人の選手たちをゴールラインのうしろから撮影していたときのことです。逆サイドでプレーが始まると、どうにも選手たちが遠くに小さく見えてしまいます。というのも、ワーチャレは11人制によるフルコートサイズのピッチで行われているからなのです。ジュニアサッカーといえば、同時期に鹿児島県で開催されている「全日本U-12サッカー選手権大会」のように、8人制のハーフコートサイズがスタンダードですから、それに見慣れていると、子どもたちがとても広いところでサッカーをやっているように見えてしまいます。

 そうはいっても、参加している選手たちは小学6年生が中心です。あと4カ月もすると、ボールサイズは5号になり、コートサイズはワーチャレと同じフルコートになります。子どもたちはジュニアからジュニアユースへと移り変わることによって、試合時間こそ違えど “本来のサッカー”に近い形でプレーすることになるのですから。

――そんなことを思いながら取材をしていると、東京ヴェルディジュニアの松尾洋監督に「小学生のフルコートを使った11人制サッカー」について話を伺うことができました。

「今年は新型コロナウイルスの影響で中止になりましたが、例年であればトレーニングマッチのなかで11人制を経験する機会が年間数試合はありました。基本的に8人制の指導と変わりはありません。もちろんポジションは変わってきますが、私たちのチームはロングボールを多用するのではなくて、ビルドアップしていくものですから、まだキック力が十分でないジュニア年代でもフルコートの広いスペースでプレーすることができます」

 パスワークによって攻め込んでいく場合、ピッチが広くなれば、なかなかボールは前に進みません。8人制であれば、2から5本くらいのショートパスをつなげばゴール前まで行けたものが、もう一回、相手を崩したり、はがしたりといったことが必要にはなってくると松尾監督は教えてくれました。

「そこは地道に崩しにいくことになります。相手が前から来ているのであれば背後にスペースができるから、背後を狙うこともできますが、そうでなければ、しっかりボールをつないで相手の出方を見ていきます。相手がどの位置からディフェンスに来ているのかをよく見ます。横の方向についても、右サイドが詰まっているのであれば、左サイドに一度展開して空いているサイドから攻めていくという意識ですね。当然、横方向も8人制より広くなりますから、サイドチェンジもスムーズにいかないことがありますよね。このように相手との距離間であったり、味方との距離間であったり、どこでスイッチを入れて崩しにいくかということが変わってきます」

 こうした8人制との違いは、やりこむことで解消していくのだと松尾監督。ピッチ上の選手自身が状況を見て判断する。相手がどういう状態なのか、相手が出てきているのか、引いているのかを自分たちで判断してプレーします。ときには松尾監督からヒントを出すこともありますが、基本的には選手が判断するのです。

「個人戦術は、練習のときにある程度のヒントを与えることで、いろんなアイデアを選手たちが持つようになります。試合のとき、その引き出しの中身をどのように使うかということですね。相手の状況をみて何を出していくかです。ジュニアユースになったら、これと同じピッチ(ワーチャレと同じサイズ)で11人制を戦うわけですが、身体も成長して距離感も良くなってきますから、今は判断力の部分を大切にしたいですね」

 ジュニアユースに上がったからといって、すぐにフィジカルやスピードが身につくわけではなく、時間がかかることもありますが「そんなに焦ることはない」と松尾監督は言います。

「全然焦ることはないです。そのうち走り切れるだけの体力もついてきます。スピードもそうです。今もそうですけれど、うちの選手がマッチアップしてドリブルで相手の逆をとって仕かけても、相手の体が大きかったり、足が速かったりして、なかなかうまくいかないときがありました。良いところにボールが出てきたのに相手に追いつかれてシュートまで行けなかった。でも、パスの狙いがしっかり見えていたし、狙いをもってプレーできているのが見ていてわかったので、フィジカルやスピードで負けたことよりも『良いところを見ていたな!』と評価してあげることが、今は大切なのだと思っています」

 そう話してくれた松尾監督。「でも、選手たちは、良いプレーはあったけれど結果に結びつかなかったって、今、みんなバスの中でへこんでいますけれどね」と笑顔でバスに乗り込みました。現在、東京ヴェルディジュニアは「2020三井のリハウス 東京都U-12サッカーリーグ1部」の公式戦を戦っています。新型コロナウイルス感染防止策の関係から取材は叶いませんが、8人制を戦う彼らの姿も見てみたいところでした。

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