「プレッシャーが弱い!」と叱責してしまう指導者へ。失点の原因を選手のせいにしていませんか?
2021年05月18日
育成/環境チームの守備がうまくいかないとき「お前ら、やっぱり走っていないからダメなんだ!」と、叱責してしまっていませんか? もし失点の原因が戦術面にあるとしたら、選手の精神面に働きかけても、守備が改善されることはないでしょう。スペインのクラブで指導経験のある倉本和昌氏は、このような声掛けを「戦術面で崩されたり、攻め込まれたりする理由を指導者が見つけられない時の典型的な対処例」だと指摘します。その対処法を5月18日発売の『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』から一部抜粋して紹介します。
著●倉本和昌
(写真●佐藤博之)
U10で露呈されたポジションへの意識の欠如
サッカーにおけるインテリジェンスを表す一要素として、海外と日本で特に大きな差があるのが、試合におけるポジショニングの意識だと私は感じています。W杯に出たことがある元日本代表選手と話した時も、「海外のトップレベルの選手と、何が一番違うんですか?」と聞くと、「日本人は適切なポジションを取り続けられない。プロになって初めて意識したり、学び始める選手もいる」という答えが返ってきました。
以前、スペインと日本のU10年代のチームが8人制で対戦する機会があり、私はその試合を観戦しました。スペインのチームはスクールで活動している選手による寄せ集めであり、8人制でプレーするのは初めてです。一方、日本は街クラブのチームで日頃から8人制を経験しているチームです。
試合が始まると、スペインチームの選手がサイドにポジションを取って、「2対1」の状況を作り出していました。日本チームの指導者は「(ボールホルダーに)もっと行け!」と大声で指示を出していましたが、2対1なのでボールホルダーに寄せれば寄せるほど、もう一人がフリーになってしまいます。結果的に最終ラインの突破を何度も許してしまい、失点を重ねて日本チームは負けました。
試合後、日本チームの監督は選手に対して、「お前ら、やっぱり走っていないからダメなんだ!」「プレッシャーが弱い!」と叱責していました。戦術面で崩されたり、攻め込まれたりする理由を指導者が見つけられない時の典型的な対処例です。そして、「だから、お前ら弱いんだ!」などと言ってしまうのです。
これは選手が悪いのでしょうか?私はそうは思いません。前述の試合のような場面で「いけ!」と言ってしまう指導者の責任です。
この試合であれば、まず相手のチームのシステムを把握し、なぜ2対1の局面が生まれるのか、その理由を探るべきでした。ボールに対してやみくもに突っ込むべきではなかったのです。
つづきは『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』からご覧ください。
【商品名】勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/05/18
【書籍紹介】
コーチが学んで行動し続けることでチームははじめて強くなる
コーチの成長=チームの勝利
これまで、スポーツ界では、チームの「勝利」を目指すことと
選手を「育成」することは対比的な言葉として扱われてきました。
チームの勝利を優先しすぎたチームは、選手個々が成長する機会を失い、
育成を優先しすぎたチームは、勝敗から目をそらすことで、
スポーツの本質を見失っている、と言われてきました。
しかし、新しい時代を担うアスリートを育成しなければならない指導者は
チームの勝利という結果を得ながらも、チームの選手全員の「成長」に
目を向けることができなければ、新時代を生き残っていくのはむずかしいでしょう。
そこで“サッカーコーチのコーチ”でセミナー参加者は1500人を超える著者が
自身のスペインやJリーグのサッカークラブでの指導経験や
心理学、脳科学、組織マネジメント理論等をミックスさせた
メソッドをあますことなく公開しました。
サッカーコーチのコーチが綴るサッカーコーチのためのサッカー指導マニュアルです。
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