やりたいこと・できること・期待されていることのバランスを。指導者が持っておきたいマインドとは

2022年06月08日

育成/環境

前回前々回と様々なカテゴリーでの指導経験をもつ岩瀬健氏が考える、指導する際の子どもたちとの向き合い方、伝え方を紹介してきた。今回はクラブにおいて指導者が掲げる目標を実現するためにはどのようなマインドを持つと良いのかを考えてみる。

『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』より一部転載

著●岩瀬健 構成●清水英斗



(写真●佐藤博之)

指導者が「やりたいこと」と「できること」に差が生まれるワケ

――他に育成年代など、指導者の質問によく挙がるテーマは何かありますか?

岩瀬 指導のスタイルに関することですね。指導者は答えを先に言うのか、それとも言わずに導くのか、選手に模索させるのか、という内容の質問ですね。

 結論としては、見守る時もあるし、問いかけたほうがいい場面や選手もいるし、はっきりと明確に伝えたほうがいい時もあります。つまり、何かひとつのやり方を貫いたり、指導者が指導スタイルにこだわることによって「その指導スタイルに合わなかった選手はどうなるんだろう」ということですね。あくまでも、自分自身の指導スタイルの確立よりも、その選手にとって適切なもの、そのグループに対して適切なものを提供することを、柔軟に考えたほうがいい。

――確立よりも柔軟ですね。目の前の選手とグループを観察して、適切なものを提供すると。そこに集約されるわけですね。その他、育成の指導についてテーマはありますか?

岩瀬 指導者はクラブと自分の関係を理解して、①自分がやりたいこと、②自分ができること、③クラブから期待されていること、この3つのバランスを保つことが大事ですね。

 これはアカデミーもトップチームも同じですが、指導者はクラブなどの組織に入って仕事をすることになるので、指導者はクラブに所属していることを認識したほうがいい。つまり、クラブから雇われている、そういう感覚も持っていたほうがいいと思います。

――そう感じるようなことが何かあったんですか?

岩瀬 そうですね。指導者は、自分でクラブを立ち上げるか、どこかのクラブに所属するか。この2つしかないですよね。もしも後者であれば、指導者によってはクラブに所属している感覚が薄いと、感じる時があります。

 指導者自身で、何か目標があってもいいと思いますが、この3つのバランスを保つことよりも、自分がやりたいことばかりを優先する指導者が多いかもしれない。「今、自分にできることはどんなことなのか」と、少し現実的な視点を持っていたほうがいいと思いますね。そして、クラブから期待されていることに、まずは全力で取り組むことによって、自分にできることが増えていって、自分のやりたいことに近づく。僕の周りの指導者を見ていると、このケースが多いですね。つまり、自分がやりたいことから考えるのではなく、自分にできることから考える。


つづきは『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』からご覧ください。



【商品名】『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』
【発行】株式会社カンゼン
2022年6月7日発売

【書籍紹介】
 選手の約7割は指導者の理論を欲していない。では、どう伝える?

 プロサッカー指導者の岩瀬健はトップチームからスクールまで様々なカテゴリーのサッカー選手を指導してきた。サッカー指導者は、ピッチ外における「指導者の理論(ロジック)」とピッチ内における「選手の感覚(フィーリング)」に隔たりがあることを自覚しなければならない、と彼は言う。つまり、机上では緻密な理論を持つことは当然として、現場ではその理論を柔軟に伝えなければ選手は躍動してくれない――。トップチーム監督デビューとなった大宮アルディージャでの経験も踏まえながら、試合、戦術、分析、練習、育成、選手など、シチュエーションごとの最良の伝え方をサッカーライターの清水英斗とともに考察していく。


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