絶えず異なる状況を無意識に経験させる。子どもたちに必要なヴィセラルトレーニングとは

2023年10月18日

育成/環境

子どもたちは外界から刺激や個々の経験に応じて脳の接続が機能的に変化していく神経可塑性を備えている。成人に近づくにつれて失われていくこの性質は、繰り返し状況が変化し、その度に決断・判断が求められるサッカーにおいて重要な役割を果たす。異なる状況に対してうまく適応する能力はトレーニングを通じて養うことが可能である。そこで今回は『フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論【実践編】』より、そのトレーニングメニューの一部を抜粋して紹介する。

著●ヘルマン・カスターニョス、監修●進藤正幸、翻訳●結城康平


子ども向けのヴィセラルトレーニングの例

 子どもたちは異なる状況への変動性と適応が必要であるということを念頭に置く必要がある。子ども向けのヴィセラルトレーニングの例を紹介しよう。

 チームの選手数に対して半分の数のボールを用意し、試合をプレーするという案がある。最初はすべてのボールを同時に使い、ゴールに入ったボールはゴール内に保持される。最後のボールが残るまで、その状態が続く。個々の探求から集団の探求まで、すべてが1つの試合で展開される。

 子どもたちは成功によって評価されるべきなのだろうか? その答えは、YESだ。しかし、成功よりも重視するべきは探求の精神だ。探求が成功に直結しない場合でも、探求を継続することだ。これによって、創造的な精神を形成する忍耐力を持つことが可能になる。その忍耐力は、結果から独立しているべきだ。

 ヴィセラルトレーニングは、暗黙の学習を通じて子どもたちが実験するのに役立つ。ウラジミール・スロウツキーとアンナ・フィッシャーは、次のように主張している。

「幼児は頻繁に異なる状況で異なる種類の情報に応じ、柔軟な行動を示す。この柔軟性は従来、概念的な知識に帰属すると考えられていた。最近の研究では、柔軟性は暗黙的に獲得され、概念的な知識を必要としないことを示している」

 非常にシンプルな例を紹介しよう。私の娘は、直感的に (特にInstagramやTikTokなど)と対話することで、その使い方を学習した。また、学校の課題にGoogle Classroomを使い、ワードプロセッサとしてのWordの使い方に慣れ、興味があるトピックをGoogleの検索エンジンやYouTubeで検索する方法もマスターした。数日前、彼女は学校でハードウェアとソフトウェアの違いを学んでいることを説明し、ソフトウェアとは何かを私に訊ねた。

 明示的な学習は、暗黙的な学習に比べて大きく遅れている。教育システムも自然な学習に大きく遅れている。それぞれのツールの使い方を学ぶために、明示的な学習は必要なかった。少なくとも本質を学ぶためには、教える必要はない。探求的な相互作用だけで、多くのことを学ぶのに十分だった。子どもたちが日常生活から学ぶべきことには、サッカーに転用できるものがたくさんあるのだ。

 フアン・マヌエル・リージョは、何度も次のようにコメントしている。

「私たちは選手を誘導し、刺激することしかできない。私たちは知性を与えることはできない。知性は、内的なプロセスだ。私たちは、何も教えることはできない。選手は学ぶことができるが、それは異なるものだ」

 私たちが必要としているのは、明示的な学習のためのより多くのトレーニングではなく、彼らの暗黙的な学習を発展させるためのより多くの試合だ。

 単に概念化を増やすことで、知性に到達するわけではない。むしろ、そのプロセスでは知性に辿り着けない可能性がある。適応的なプロセスを結びつけることによって、人々は知性に到達する。メキシコ代表などを指揮したフアン・カルロス・オソリオは「64の平方根を知る必要はない」と言っており、それは正しい。


全文は『フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論【実践編】』からご覧ください。


【商品名】フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論【実践編】
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2023/10/03

【書籍紹介】
タスク(課題、目的)に向けて「レイヤー(層)=変数」を重ね、実際の試合以上の複雑性を生み出す

阿部勇樹(元日本代表)推薦!「この先のサッカーのために何が必要か? 指導者として新たな発見があった」

上巻『フットボールヴィセラルトレーニング[導入編]』では、神経科学を実用的に用い、認知、意思決定、無意識下でのプレーを最適化するための理論を紹介した。

下巻『フットボールヴィセラルトレーニング[実践編]』では、タスク(課題、目的)に向けて「レイヤー(層)=変数」を重ね、プレーヤー、フィールドサイズ、ピッチ形状、ゾーニング、ボール、ゴール、ゲート、ツール、時間などを操作し、実際の試合以上の複雑性を生み出すヴィセラルトレーニングの構造を具体的に解説していく。

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