「困難こそが最高の学校」才能を練磨する逆境とトレーニングの目標設定
2023年06月08日
育成/環境前回の記事では日々のトレーニングにおいて、限られた練習時間で試合で遭遇するような偶発的局面を経験するにはヴィセラルトレーニングが効果的出ることを説いた。今回は選手たちの成長に最も重要だと考えられる逆境と普段のトレーニングの目標設定について、『フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』より一部抜粋して紹介する。
著●ヘルマン・カスターニョス、監修●進藤正幸、翻訳●結城康平
才能ある選手にとって障害の克服が最も重要なこと
「成功するために直面する必要があるのは、逆境である」ジグ・ジグラー(アメリカの自己啓発作家)
「逆境」という感覚は、比喩的な例を通じてより簡単に理解されるはずだ。2020年のブラジル・サンパウロ州選手権の決勝戦前、パウメイラスの監督バンデルレイ・ルシェンブルゴは、「パトリキ・ジ・パウラは毎日銃声が飛び交うファベーラ(貧民街)出身だ。あの子が決勝戦で怖がると思うか?」と言った。トーマス・トゥヘルはかつて、「才能のある人は問題を解決するのが上手だ。もし今再び若い指導者になることができたら、才能ある選手たちの人生をできるだけ困難にするように教えるだろう。なぜなら、障害を克服することが才能ある選手たちにとって最も重要なことだからだ」と言った。ディエゴ・シメオネは、「危機の中で成長する可能性を決して軽視してはならない。困難こそが最高の学校だ。何かがうまくいかなくなったときほど、学ぶことが多い」と断言した。
指導者だけでなく心理学者、発明家、哲学者も同じ考えを持っている。古代ローマ時代の哲学者ルキウス・アンナエウス・セネカは、「逆境を経験しないことは、不運だ。なぜなら、自分のリソースを発見できなくなり、自分に何ができるか、そして本当に自分が誰なのかを知ることができなくなるからだ」と述べた。
セサル・ルイス・メノッティは、賢明に表現した。
「トレーニングの目標は、チームが精度を維持できる速度を上げることだ」
両方を同時にレベルアップすることは、困難だ。元ドミニカ共和国監督のジャック・パッシーが言うように、「速いチームほど正確さに欠ける。非常に速いチームのDNA(チーム本来の伝統)がそうであるように、守備と攻撃の両面で、試合のあらゆる局面で多くの失敗を犯すことを前提としなければならない。正確なプレーだけが必要な場合、非常に速いは適していない。非常に速いチームのDNAには、失敗から素早く回復することが重要になる」。
正確さの道を進むか、速度の道を進むかという2つの道がある。従来のトレーニングは正確さ、徐々に、段階的、論理的、安定的、連続的な成功を目指している。これは、長年にわたって、スポーツトレーニング界を支配してきた論理だ。ヴィセラルトレーニングの道は、その連続性の論理とは反対の方向に進む。ランダムで不安定で、速度に応じて速くなるが、その間にミスが入ることも許容するのだ。速度―精度の調整に、サッカーのジレンマがある。古典的なアプローチは、精度を低下させずに速度を上げることを主張している。ヴィセラルトレーニングでは、精度を速度に合わせる必要があると考えている。
また、速度と精度の調整は、意識的に行われるわけではない。ここでも、無意識の追求が効果を発揮する。ハイコ・ロイスは次のように述べている。
「速度―精度設定に対する認知的制御は、意識的な表象に基づくものに限定されず、意識的に表象されていない刺激によっても引き起こされる可能性がある」
全文は『フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』からご覧ください。
【商品名】フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2023/06/06
【書籍紹介】
アルゼンチン発 科学×本能の融合
教育・芸術の創造性にも通ずる「無意識」をトレーニングする新たなパラダイム
神経科学の実用→瞬間的な認知の獲得→プレー実行スピードの加速
アーセン・ヴェンゲルは「サッカーの試合を変革する次のカギは、神経科学だ。次に学ぶべきステップは、脳のスピードなのだ」と言った。なぜなら、現代サッカーは肉体的、戦術的ともにもはや極限のレベルに到達し、リオネル・メッシが1秒でプレーを解決するように、今や無意識下でのプレーを覚醒させるフェーズを迎えているからだ。2022年のカタール・ワールドカップを制したアルゼンチン生まれの「ヴィセラルトレーニング」は、神経科学を実用的に用い、無意識をトレーニングすることで、瞬間的な認知を可能にし、プレー実行スピードを加速させる。ドリルトレーニング、アナリティックトレーニングといった伝統のトレーニングを覆し、エコロジカルアプローチ、ディファレンシャルラーニングのさらに上を行く、「本能、直感を刺激する」先鋭のトレーニング理論がいよいよベールを脱ぐ。
【関連記事】
・無意識に次のプレーを予測する。解決すべき偶発的局面を繰り返し経験するためのトレーニングとは
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