指導者に求められる説得力。グラスルーツの指導者に不可欠な「意見を交わす経験」

2019年01月19日

コラム

ドイツは2000年の欧州選手権で惨敗。これを機にドイツサッカー協会(DFB)は本格的な育成プロジェクトを導入。これが2014年のブラジル・ワールドカップで、優勝という結果につながった。DFBの改革が結実した理由はどこにあるのか。2001年にドイツに渡り、指導者としてそれを体感してきた中野吉之伴氏の言葉から、指導者に必要な素養が浮かびあがってくる。

『世界王者ドイツの育成メソッドに学ぶ サッカー年代別トレーニングの教科書』より一部転載

文●中野吉之伴 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部


ドイツが導き出した指導者育成の最適解

 育成プロジェクトの中で、最も困難な課題が指導者育成だったといえる。DFB専任指導者を務めるベルント・シュトゥーバーも次のように強調していた。

「世界のサッカーがどこへ向かっているのか。インターナショナルなトレンドを知り、それをドイツの現在位置と比較して改善点を見つける。そこに自分たちの長所を組み合わせていくことで、将来に向けての方向を見出していくことが使命だった。

 DFBの各代表チームだけではなく、積極的な情報開示と情報交換を行ってブンデスリーガの育成アカデミーやシュツットプンクト(編集注:「トレセン」の意)のタレント育成とも連携をとる。プロクラブだけではなく、底辺層のアマチュアクラブに至るまでの指導者育成へと活用していくことが重要である」

 グラスルーツの選手にまで自国のサッカー哲学を伝え、浸透させられる指導者を育てることを目指したのだ。そのためのプロジェクトとして、プロサッカーコーチ・A級・B級ライセンスという形だった指導者ライセンスのシステムをさまざまな層を包括できる形に変え、各段階でそれまで以上に専門的で集中的な講習をするように努めた。

改革ポイント
・プロサッカーコーチライセンス(UEFA・S級相当/プロサッカーチーム対象)
・A級ライセンス(UEFA・A級相当/アマチュア上位リーグ/ユース)
・B級ライセンス(UEFA・B級相当/育成年代が主な対象)
・C級ライセンス(UEFA・B級相当)
・その他のライセンス(チームリーダー・キッズ/ジュニア/ホビー)

 一番の変化はC級の設置だ。厳密に言うと、これまでのB級がC級と同等の扱いになり、A級との間に新資格としてB級が立ち上げられた。そのB級に特化したテーマが『育成年代』の指導だ。ちなみに、B級は2016年から『エリートユースライセンス』になった。

 長い間、ライセンス取得の講習会は指導教官が講義をし、参加者は聴講するスタイルが中心だった。しかし、DFBはこの部分にメスを入れた。コミュニュケーションとディスカッションを重視する方向へと大きく舵を切ったのだ。

 ようするに、参加型の実践的講習会へと変革したのだ。参加した指導者はただ与えられる知識を暗記するのではなく、自らで練習メニューを考え、「なぜ、そのやり方が正しいのか?」を発表をして論じ合う。習ったことを即グラウンドでフィードバックし、より実践的に使える知識を身につけるためだ。

 DFBのプロサッカーコーチライセンス主任指導者のフランク・ヴォルムートは『指導者育成コンセプト』をこう話す。

「講習会ではグループ作業を通して各指導者の個人レベルを上げるように取り組んでいる。少人数のグループ作業を繰り返すことで、一人だけでは見えない自分の姿をイメージできるようになる。目標はすべての指導者を同じような指導者にすることではない。それぞれが持つポテンシャルを引き出すため、己を知り、お互いを高め合うことが我々に課せられた仕事だ」

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