世界的流行の“Xブロック”には問題点がある。1対1で失点を限りなく減らすためのジョアン理論

2022年05月20日

戦術/スキル
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前回の記事ではセービングの際にやってはいけない型を紹介しました。今回は1対1での対応の仕方を分析します。ドイツをはじめとした世界で盛んに指導されているXブロックも考察してみましょう。

『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』より一部転載

著●倉本和昌 監修●ジョアン・ミレッ


「Xブロック」は本当に有効か

 私の提唱する1対1の考え方は、「これをすれば、絶対に止められる」というものではありません。相手の得点する可能性をできる限り減らすための方法であり、この方法を実践してもゴールを決められることはあります。そのときは、相手選手に拍手してください(笑)。技術を正しく理解して実践することで、10本中10本がノーチャンスだったのが1本、2本と防げるようになり、最終的には5〜7本防げるようにするためのものです。

 Aの状況をおさらいすると、GKと相手の距離が5.5メートル以内で、なおかつボールが二人の中央にあるケースです。

皆さんにイメージしていただきたいのですが、このような状況のとき、GKはどうすればいいでしょうか? 多くのGKがやっている対応例を先に紹介してから、私の考えを説明したいと思います。

 通常の構えから腰を落とすようにして構えているGKを見かけますが、これでは両足の横が大きく空いていて、失点の可能性が高くなります。

 ほかには、近い距離からのシュートを防ぐ方法として「Xブロック」という対応があります。両手・両足を広げてシュートをブロックするプレーであり、以前は「スターセーブ」といわれていました。2018年W杯のあとにはFIFAのレポートにもXセーブという用語は出てきており、ドイツなどでは盛んに指導されているようです。

 私は、Xブロックで対応することは反対です。FIFAが推奨しようが、ドイツのコーチが指導していようが、私が指導する選手には絶対にやらせません。個人的な感情ではなく、私が提唱する方法よりも止められる可能性が少ないからです。

 有名なコーチがいっているから、世界的に流行っているからといって、そこで思考停止してはいけません。「それは本当か?」と正しく分析する必要があります。でも、多くの人がいいます。「テア・シュテーゲンはそれで何度も止めているじゃないか!」と。

 私にいわせれば、XブロックではGKの体の周囲のスペースがあまりに広く空いてしまいます。まず、両足を開きながらの対応になるので股間が空きます。手(腕)の周囲についても上にも下にもスペースが空いています。したがって、ボールが手に当たったとしても、そのまま脇を抜けてゴールに入る可能性があるのです。


つづきは『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』からご覧ください。


<プロフィール>
ジョアン・ミレッ
1960年11月1日生まれ、カタルーニャ州出身。85年、怪我のため選手を引退しGKコーチを始める。02年からバスク州にあるゲルニカ市 に拠点を移し、同クラブにて育成/トップのGKコーチを務める。バスク州サッカー協会にてレベル1から3までのGK戦術技術指導講師。2013年に来日し、湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーを経て、2017~2018年までFC東京のトップチームGKコーチなどを務めた。2022年から浦和レッズトップチームGKコーチに就任した。

【商品名】『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』
【発行】株式会社カンゼン
2022年5月20日発売

【書籍紹介】
 スペイン人GKコーチ、ジョアン・ミレッ氏が30年以上GKのプレーを分析し導き出した、GK技術の真髄を伝授!

 ポジショニング、セービング、1対1の型など、ミレッ氏が独自に突き詰めた“真”のGKスキルバイブルです。全GKコーチ必読の書。


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