日本サッカー界に欠けている「正しい守備の文化」。早急に改善すべき3つの“過ち”

2015年07月22日

コラム

現在発売中の『フットボール批評issue06』(カンゼン)では、「決定力不足の正体」と題した特集を企画。同誌の人気シリーズ「守備のセオリーに反するサムライたち」では、イタリア人指導者フランチェスコ・マクリ氏と宮崎隆司氏のコンビがJリーグの守備について徹底検証している。一部抜粋して掲載する。

(文●フランチェスコ・マクリ&宮崎隆司 写真●Getty Images)

『フットボール批評issue06 決定力不足の正体』より一部抜粋


SAITAMA, JAPAN - MARCH 04:  Henrique De Andrade Silva #10 of brisbane Roar and Ryota Moriwaki #46 of Urawa Reds compete for the ball during the AFC Champions League Group G match between Urawa Red Diamonds and Brisbane Roar at Saitama Stadium on March 4, 2015 in Saitama, Japan.  (Photo by Masashi Hara/Getty Images)

日本の守備はなぜ同じ過ちを繰り返すのか?

 これほど長く同じ類のプレー(過ち)が繰り返されるのは一体なぜなのか。日本代表やJリーグの試合を観るごとに積もる疑問、これを解くための手段として“ある試合”の分析を始めました。
 
 その試合とは、2010年1月1日の天皇杯決勝(ガンバ大阪vs名古屋グランパス)。なぜ5年も前の試合を分析の対象とするのか。理由は、冒頭に記した通りです。過去と現在に共通する事象を浮き彫りにすることで、長きにわたり同じ類のプレーが繰り返される要因を探るためです。

 その要因が明確になれば、改善の方法もまた明瞭になる。そして正しく改善されていけば必然的に守備のレベルは向上し、それはすなわちリーグ全体に見る技術レベルの底上げに直結する。高い技術の応酬が増せばそれを間近で見たいと思うファンもまた必然的に増す。だからこそ具体的かつ客観的な分析の継続が重要であると我々は考えるのです。(中略)
 
 私たちは、あくまでも建設的な議論の材料となることを願いながらフットボール批評の連載(分析)を記しています。だからこそ徹底して具体的な根拠、すなわち「実際の場面・展開」を詳細に示すことにこだわっているのです。(中略)
 
 見事な攻撃が称賛されるのは当然だとしても、その一方で守備に対する言及は日本でどれだけ盛んに行われているのでしょうか。現実には、守備に対する的確な批評はほとんど存在せず、しかもその傾向は長く続いていると言えるのではないでしょうか。

 事実、2010年の天皇杯決勝からさかのぼること10年。2000年の天皇杯決勝・名古屋グランパスvsサンフレッチェ広島における、ストイコビッチの「伝説のゴール」もまた、サンフレッチェのDF陣がバタバタとスライディングで倒れていったことこそが要因であったにもかかわらず、その守備に対する批判は皆無であったように記憶しています。
 
 実況席で繰り返されたのは、「素晴しいゴールですね」という賛辞のみ。これでは間違いが間違いとして認識されることはなく、むしろおざなりにされることで間違ったプレーを常識とする考え方(文化)が次第に形成されていく。そのような好ましくない循環に陥っているのではないかと、10年前と5年前の天皇杯決勝を振り返り、そして今日のJリーグに共通する事象を目にしながら感じるのです。

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