プロのプレー映像から学ぶ! 数的不利でも突破できる選手の違いはどこにある?
2015年09月04日
サッカーエンタメ最前線≪ブラジル代表 ウィリアンの華麗な“エラシコ”≫
チャレンジしなければできるようにはならない
もう1つ紹介したいのは、ブラジル代表・ウィリアン(チェルシー)の完璧な“エラシコ”での突破。わざわざ解説するまでもないお手本のような数的不利での突破ですが、このプレーで抑えておきたいのは、華麗な“エラシコ”だけではなく、ウィリアンが余裕を持ってドリブルを仕掛けているということです。
まず相手チームがボールを保持しているときにウィリアンはボールホルダーにプレッシャーをかけにいきます。プレッシャーをかけられたボールホルダーは、自陣深くでボールを奪われたくないため、大きく前線にボールをクリアしようとします。ウィリアンは、それを無理にカットしようとせず、相手のクリアミスを誘うようなプレスに留り、相手のクリアミスを誘発。そのミスをブラジルの選手が高い位置でボールを奪い、展開が守備から攻撃に切り替わります。するとウィリアンは、すぐにサイドに開きボールを受けて、1対2の状況でゆっくりとドリブルを仕掛け始めます。
ここで考えたいのは、チームとしての“攻守の切り替え”と“ポジショニング”です。ウィリアンのプレスには、「ここでボールを奪う」という意識はそれほどないと思われます。それは、プレッシングが個人の仕事だけでなくチームとしての意識が大切だということを理解しているからでしょう。大事なのは、チームとしてどこでボールを奪うかということ。そこに共通意識があるからこそ、他の選手がボールを奪ったあとすぐに良いポジションでボールを受けることができ余裕を持ってドリブルを仕掛けることにつながっています。
ウィリアンは、パスやドリブル、さらにシュートも巧い、非常に選択肢の多い選手です。そういった技術があってこそのエラシコでの綺麗な突破ですが 、その前にしっかりとボールホルダーにプレスをかけていること。加えて、チームが守備から攻撃に切り替わるタイミングで適切なポジションに移動し、ボールを受けていることも忘れてはなりません。
こういった状況で、ドリブルを失敗してボールを奪われてしまえば、チームメイトや監督から非難されてしまう可能性もあります。「突破できないなら、作りなおせ!」と。しかし、まずチャレンジしなければ、そういった突破のタイミングやボールコントロールが向上することはないでしょう。
数的不利な状況でドリブルを仕掛けて、何度もボールを取られてしまっては「状況判断の悪い選手」というレッテルを貼られてしまうこともあるかもしれません。しかし、数的不利な状況を一人で切り拓ければ、ビッグチャンスにつながることは間違いありません。
もちろん、闇雲にドリブルを仕掛けすぎたり、チームプレーやセオリーを軽視しすぎてはいけません。ただプレーの選択肢を増やすためも、育成年代の選手には、こういったプレーにもどんどんチャレンジしていってほしいものです。
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・『欧州フットボール批評』
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