日本一に輝いた強豪・流経柏高校の本田監督が語る“勝利の哲学”
2013年12月23日
コラム選手の自立こそ指導者に求められる使命
サッカーは他のスポーツに比べてより自立心が問われます。バレーボールやバスケットボールのようにタイムアウトはありませんし、野球のように攻守が入れ替わる度にプレーが切れるような競技ではない。「シュートを打て」「止めろ」といった指示をいちいち出すことはできないのです。
ピッチに入ったが最後、ボールを止めるのか蹴るのかパスを出すのかシュートを打つのかはすべて自己判断になります。
しかも集団競技ですから、全員がひとつの目標に向かって意思統一を図る必要がある。とりわけサッカーは周囲とのコミュニケーションが欠かせないスポーツです。けれども最近ではうまくチームメイトと喋れない選手がたくさんいる。
プロの世界に入れば、16歳と30歳の人間が同じチームで戦うことになります。そこでハッキリと物事が言えなかったら、周囲の信頼を得ることはできません。日頃から積極的にチームメイトや監督とコミュニケーションを取り、納得できないことがあれば、その都度きちんと話し合ってモヤモヤを解消する力も求められます。
しかしながら、年々子どもたちの人間的成熟が遅れているように感じています。それと同時に、高校生年代でも明らかな自立の遅れを感じさせられる瞬間が実に多い。
これは流経であった話ですが、ある生徒の親御さんがポツンと廊下に立っていました。「どうしましたか?」と聞いてみると、「ウチの子が体操服を忘れたので届けに来たんです。1年生なんですけど」と言う。
私は呆れて「お母さん。小学生じゃないんですから、そんなことをしちゃダメですよ」とたしなめました。それが恥ずかしかったのか、お母さんは一目散に飛んで帰りましたけれど、最近はそういったことが非常に多い。
昔なら、子どもが家まで体操服を取りに行くか、「忘れました」と先生に言って怒られるのが当たり前でした。が、今の親は高校生になっても赤ん坊のような扱いをしている。つまり、過保護なんです。それが自立心の欠如の大きな要因ではないでしょうか。
高校教師になって30年以上が経ちますが、自立心の欠如は年々、深刻化しています。市原緑高校で教えていたときは、私のメチャクチャな指導に対し、子どもたちは文句を言ってきました。理屈をこねてくるから、逆に厳しく押さえ込んでいたくらいです。習志野高校時代も自由な環境が幸いしたのか、自立している選手が多かった。
しかし今では歯向かってくる子など皆無に近い。みんな大人しくしているので、手を上げる材料もありません。しかも1対1で話してみると本当に幼い。何か不満を感じたときにはふて腐れたり、顔色を変えるだけ。あまりにも自分の気持ちを押し殺しているように思えます。
サッカーでいえば、情報化時代の弊害もあるかもしれません。「プロのチームで誰かが監督批判をして外された」というような報道があちこちで流されるので、選手たちは「監督の言うことを聞かなきゃ後が怖い」と思ってしまうのかもしれません。それでも自分の考えをしっかりと主張できないようでは、勝利を目指すことなどできない。選手のメンタリティをどうするかという大きなテーマに日々、頭を悩ませています。
昔は厳しく苦しいトレーニングをしていれば、自然と強い心が育ちました。ですが、時代が変わり、鉄拳制裁もできなければ、言葉による厳しい指導もできない。指導者はそれに代わる方法を見出さなければならなくなりました。
今は理論づくめの指導が中心になりましたが、ただ話して聞かせているだけではわからない場合が多い。だからこそ、あいさつや掃除、礼儀作法など地道なことから積み重ねて大人と話す機会を多く作らないといけない。自立心を養っていくことが指導者の大きな使命だと私は考えます。
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