生と死を強く考えさせられた石川直宏選手の「2011」
2014年03月11日
インタビュー◆松田直樹との別れ
FC東京は、中断期間に松本山雅と練習試合を行った。この試合は震災のチャリティーマッチとして黙祷が捧げられ、募金も行われた。
松本山雅には石川の弟が所属していた。この日は、控えのGKである弟も、故障明けの兄も、残念ながら試合には出られなかった。
それでも、たくさんの松本山雅ファンや、東京から遥々駆けつけたFC東京サポーターの声援に、久しぶりの試合は大いに盛り上がった。
石川には、懐かしい友人との再会があった。松田直樹である。
松田とは、マリノスでわずかな期間ではあったがチームメイトだった。石川がジュニアユースの頃からの憧れの先輩でもある。大きくて、粗野で、男気があった。
「おまえ、松本来いよ!」
その日、石川は何度となく松田からそう言われた。
試合が終わり、奥に引き上げると、そこで再びシャワーから出てきた松田と顔を合わせた。
「冗談じゃねえからな。松本で待ってるからな!」
それが、松田との最後の会話になった。
8月2日午前。
練習中に突然倒れた松田は、心肺停止の状態で高度救命センターに緊急搬送された。直ちに人工心肺が取りつけられたが、意識はなかった。急性心筋梗塞だった。
石川は弟から連絡を受けた。
「集中治療室にいる。もしかしたら……やばい」
次の日、石川は身重の妻に見送られて、車に飛び乗った。
走行中、ひとり松田を思った。
「いったいマツくんは、どんな表情でいるんだろうか?
そこで自分は、何と声をかけたらいいのだろうか?」
死と隣り合わせ―――。
そんな松田のイメージは自分の中になかった。
記憶の中の松田は、いつも強かったのだ。
長い時間の中で、ひたすら〝何かの回答〟を自分の中に求めていた。
起こることすべてに意味がある。
そして、それは何かによって決められる。
例えば「死」であるならば、そこには何がしかの原因がある。
病気であったり、もともとの体質であったり。
それが何かのタイミングで起こる。
「生」もまた、何かのタイミングに違いない。
今、友人が生死の境をさまよい、
自分の子どもはこの世に生を受けようとしている。
「これはいったい、どういうことなのか?
なぜ、このタイミングなのか?」
同じ問いが、繰り返し、繰り返し、頭の中を巡った。
病院に着いたのは、夜だった。
横たわったその体は温かかった。
松田は、石川が病院を後にした次の日に、息を引き取った。
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