生と死を強く考えさせられた石川直宏選手の「2011」

2014年03月11日

インタビュー

◆ゆりかごダンス

 赤ちゃんを抱っこする形で、腕を左右にゆらゆらするゴールパフォーマンスがある。
 何人かのチームメイトが横に並んで、いっしょにやる場合もある。
 一般に「ゆりかごダンス」と呼ばれるこの〝儀式〟は、1994年のワールドカップアメリカ大会で生まれた。
 ブラジル代表FWだったベベットが、生まれたばかりの自分の子どものためにやったのが、始まりだとされる。
 あれから20年。世界中で何人の赤ちゃんが、ピッチ上で祝福されたことだろうか? ゆりかごダンスは、プロ、アマ、すべてのサッカー人の憧れである。
 石川のゆりかごダンスは、娘が生まれて、ちょうど2週間後に訪れた。

 10月19日水曜日。
 ニッパツ三ツ沢球技場でのアウェイ横浜FC戦、後半ロスタイム残り1分。
 中央のフリーキックから徳永が右サイドを駆け上がり前線へクロス。それを相手DFがクリアすると、ボールが「父親」の前にバウンドしてきた。
 ほんの一瞬だけ間があったか、次の瞬間ボールはゴールネット右隅に吸い込まれた。
 見事なボレーシュートだった。
「まったく忘れていたんです」
 と、石川はその日を振り返る。
「みんながワーっと走ってきて、もみくちゃになって。
 ヒデ(高橋秀人)だったのかな?『ゆりかごゆりかご!』と言ってくれて。
 それでようやく思い出しました。ゴールラインにみんなで並んでやりました」

 プレーが再開されると、ほどなく終了のホイッスルが鳴った。
 すると、今度は東京のファン・サポーターが陣取る客席が、石川のチャントと共に、ゆりかごダンスを始めたのだ。スタンド全体が左右にゆらゆらと揺れていた。
 試合終了のあいさつが終わると、石川は客席の方に向かって歩いて行った。そして、促されるように、自らもゆりかごダンスを踊った。
「これ、どこまでやったらいいんだろうって(笑)」
 うれしさと、照れ臭さと、感動とで、鳥肌が立ったという。
 バックスタンドからゴール裏、メインスタンドまで、ずっとゆりかごが続いていた。
 石川は、今でもその録画を見るらしい。
 動画サイトに上がっているスタンドから撮影された映像も、大切にとってある。
 この映像は、石川と家族の大切な宝物になっている。

【次ページ】◆スタジアムの天使

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