人口450万人の小国・クロアチアから“天才”が輩出され続ける理由
2015年08月28日
サッカーエンタメ最前線優れた選手になるための“3ファクター”
――素材という点では旧ユーゴ諸国のいずれも似通っているはずが、A代表となるとクロアチアだけが継続的な成功を収めています。どこに差が生まれているとお考えですか?
良い質問だ。優れた選手になるためには、一般的に三つの要素を備えなくてはならない。第一が「サッカーの才能」。第二の要素は「運動能力」。三番目の要素となるべきものが「アタマ」だ。キャラクターの一部を成すのがアタマであり、その潜在意識の大部分は遺伝的に決定付けられている、という説を私は支持している。第一や第二の条件に依存することなく、キャラクターが行動を決める時があるのさ。選手として戦うのか、戦わないのか。できると判断してチャレンジするのか、できないと判断して止めてしまうのか。
セルビア人もボスニア人もサッカーの才能に優れ、運動能力に恵まれた選手を送り出している。だが、クロアチアにはキャラクター的に優れた選手がいて、それが同国の特徴の一つになっているんだ。安定したパフォーマンスを継続するためにはキャラクターこそ重要だ。最高の活躍をした直後の試合で、最悪のパフォーマンスに転じるような選手がチームにいては良くない。我われに必要なのは、試合を通してパフォーマンスが安定した選手のほう。波があるような選手では駄目なのさ。
キャラクター的に優れていたら、ギリギリの状態に追い込まれても屈することなく、むしろ勇気や積極性が表に出て、精神的な重圧を撥ね除けることでパフォーマンスを発揮する。そういった面でクロアチア人は隣人(旧ユーゴ諸国)とニュアンスの違いがあり、我われが築き上げたユース指導法を実践するスクールが相俟って、クロアチア代表は隣国以上に継続的な成功を収めてきたのだと思う。
――クロアチアは愛国主義的な背景からも、人一倍チームスピリットの強い選手が多いと私は思っているのですが、いかがでしょう?
君が何を言いたいかは分かっている。しかし、それは過去の話だ。とりわけ独立戦争( 91~ 95年)以降にその傾向は際立っていたが、若い世代の間では異なる。今のユース代表の選手達だって戦争時に何が起こったかは知っているさ。でも、それとこれとは違う。状況は変わっているんだ。
それこそ90年代は監督が「クロアチアのために頑張るぞ!」と吠えるだけで選手全員のモチベーションが上がった時代だった。今は愛国主義だけでは不十分。プロとして生きる選手全員が最大限の努力をして真摯にサッカーに取り組むこの時代、それ以外の全要素が選手になくてはならない。
クロアチア人はクロアチアを愛している。とはいえ、世界中の人々がそうじゃないか。君だって日本を愛しているし、ブルガリア国民はブルガリアを、サウジ国民はサウジアラビアを愛している。誰もが自分の国を愛しているだけに、愛国度なんて基準の中心にならないね。サッカーの才能、運動能力、諦めず追求するキャラクター。そして、それに伴うべき練習量。以上だ。
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