「PK失敗」を防ぐためのヒント。PK研究で名をあげたスポーツ心理学者が語る“二つの戦略”

2016年12月21日

メンタル/教育

もう1秒とる

1.もう1秒とる

 ヨルデットはユース代表選手たちに、EURO92準決勝でファン・バステンが準備に時間をかけずにPKを蹴ったビデオを見せ―選手たちはその頃まだよちよち歩きだった―またイングランドの選手が主審の笛に反応するスピードがウサイン・ボルトと同じくらい速いというデータを紹介した。だから時間をかけることが重要なのだ、と話した。

 U-21欧州選手権準決勝、対イングランドは13-12のスコアでオランダが勝利したドラマチックなPK戦となった。そのときジャンニ・ザイフェルローンは最後のキッカーとなり、蹴るまで30秒をかけて決めた。試合は1 -1で終了し、PK戦では5人ずつ蹴って4 -4のイーブンだった。オランダは2回あった勝利のチャンスをアーノルト・クライスワイクとダニエル・デ・リッデルの二人が失敗して手放していた。7番手で登場したザイフェルローンは成功し、その後2巡目でまた順番が回ってきた。

「時間をかければ必ず成功するというわけではないが、ゆっくり時間をとれば少なくとも私の調査で見るような、不注意からいい加減な方向に蹴ったり、あせってぼてぼての緩いボールを蹴ってしまうようなミスは防げる」とヨルデットは繰り返した。

「データに基づいた戦略に集中すれば、すぐに自分自身と状況をコントロールできていると感じられ、自分の思うままのパフォーマンスが発揮できるようになる。ひと呼吸おくことは、リラックスして集中力を高める効果があり、選手を瞑想状態にするのはむずかしくても、ストレスによるネガティブな影響を受けないようにはできる」

 試合後、ヨルデットは両チームの視線の方向と反応時間について分析した。そしてオランダの選手たちが自分のアドバイスをしっかり聞いてくれていたことを喜んだ。

 オランダの選手たちはペナルティスポットにボールをセットしてから、一人の例外なくGKと目を合わせたまま後ろに下がった。一方、イングランドの選手たちの40%が回避戦略をとって視線をそらせていた。オランダの選手たちは主審の笛が吹かれてから1秒以上おいてボールを蹴ったが、イングランドの選手たちは0・51秒で蹴っていた。それでもA代表の倍の時間をかけていたのだが。

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