「PK失敗」を防ぐためのヒント。PK研究で名をあげたスポーツ心理学者が語る“二つの戦略”

2016年12月21日

メンタル/教育

練習と準備は異なる

 彼は私に、イングランド代表が2006年ワールドカップのためのトレーニングをしているときの写真を見せた。スティーヴン・ジェラードがPKを蹴り、全選手が自分の番をペナルティボックスの端に並んで待っている写真だ。

「きちんと計画を立てるか、本番と同じ状況を作ってやらないことには、PK練習は意味がない」とヨルデットはその写真についてコメントした。

「写真で見る限り、その練習は間違っている。それはPKの練習じゃない。本番では自分の周囲にチームメイトが大勢いる中で蹴るわけじゃないんだから。本番よりはるかにたやすい状況を設定してリハーサルをするのは悪い練習だ。練習でペナルティスポットまで歩いていった経験がないと、本番で選手たちは怖じ気づいてしまうよ」

 EURO2012の前には、イングランド代表選手たちは全員練習後にPK競争に参加した。6人一組になり、3人のGKを相手に3本ずつ蹴る。記録は査定された。だが試合と同じ状況を作ったのだろうか?

 1976年にチェコスロヴァキアがやったように、ラウドスピーカーから観客の声を大音響で流す中での練習だったのだろうか?

 フース・ヒディンクが2002年ワールドカップのスペイン戦にのぞむ韓国代表選手たちにやらせたように、一つのペナルティスポットからもう一方のペナルティスポットまで歩いていって蹴るような練習をしたのだろうか?


【あわせて読みたい】なぜ『PK』は決まらないのか。スポーツ心理学者が語る『PK』失敗につながりやすい“回避行動”とは


プロフィール

著者:
ベン・リトルトン
ロンドン在住のフットボールライター。スポーツイラストレイテッド誌やタイム誌に寄稿するジャーナリストであり、ブルームズバーグTVでサッカーについての解説者もこなす。またサッカーのコンサルティングを業務とするサッカーノミクス社の創業者の一人で、取締役を務める。

監訳:
実川元子
翻訳家/ライター。上智大学仏語科卒。兵庫県出身。メキシコオリンピックの釜本選手のハットトリックでサッカーの魅力み取りつかれ、現在もJリーグを中心にスタジアム観戦に通う。訳書にD・ビーティ『英国のダービーマッチ』、S・ブルームフィールド『サッカーと独裁者』(白水社刊)などがある。


PK2
【商品名】PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?~
【発行】株式会社カンゼン
【著者】ベン・リトルトン
【監訳】実川元子
四六判/416ページ
2015年12月17日発売
⇒膨大な取材とデータが解き明かす12ヤードの攻防に隠された真実


 

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