アトレティコ・マドリーはいかにして“二強時代”に終止符を打ったのか。巧妙な守備戦術の極意

2017年01月19日

サッカーエンタメ最前線

巧妙に封じられた「ニアゾーン」

 もう1つの弱点である「ニアゾーン」についても、アトレティコは巧妙に封じている。CB(センターバック)とSB(サイドバック)の間にあるはずの「ニアゾーン」がほぼ存在しないのだ。

 押し込まれたときのアトレティコは、ペナルティーエリアの横幅を4人のDFで守っている。SBの基本位置はペナルティーエリアの角。つまり、タッチライン際にいる相手選手をマークするのはSBではなくSH(サイドハーフ)になっている。

 実質的な最終ラインは4+1の5人なのだ。通常なら、タッチライン際にいる相手をマークする選手(SB)と、CBの間隔が広がるので「ニアゾーン」が発生するのだが、アトレティコの場合はペナルティーエリア角にSBがニラミを効かせていて「ニアゾーン」が埋まっている。

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相手のサイド攻撃に対してSHが応対、SBはペナルティーエリア角に待機する。4+1の守備によって「ニアゾーン」を消す

 さらにアトレティコが巧妙なのは、バルセロナの右サイドのような変則的な攻撃にも対応できるところである。

 通常、攻撃側は攻め込んだ時点でウイングが中へ入って、タッチライン際にはSBが張り出してくる。対するアトレティコはペナ角のSBがウイングとマッチアップし、SHが攻撃側のSBをマークすれば事足りる。

 ところが、バルセロナは右ウイングのメッシがかなり早い段階からトップ下の位置へ移動していて、タッチライン際にSBダニエル・アウベス(16─17シーズンはユベントスに移籍)が上がっていく。

 仮に、ここでアトレティコのSHがDアウベスをマークし、SBがペナ角ポジションをキープした場合、中盤中央に数的不利が発生してしまう。簡単に言えば、アトレティコの左SBが誰もいない場所を守っているぶん、メッシが浮いてしまうわけだ。

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バルセロナに対してアトレティコが4+1で守備をすると、中央のバイタルエリア付近がバルセロナの1人優位になってしまう

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