育成年代の『引退』を考える。“選手権で終わらせない”興国高校サッカー部の取り組み

2017年03月17日

コラム

通常スポーツ界で『引退』という言葉は、プロ選手が現役活動から引き退くときに使用される言葉です。しかし、日本では部活動などで3年生が最後の大会で敗退したときにも『引退』という言葉が使われます。例え、その選手が次のステップでそのスポーツを続けるとしても一旦『引退』という言葉が使用されるのです。今回は、冬の高校サッカー選手権敗退後も3年生に『引退』という言葉を意識させないという、興国高校サッカー部・内野智章監督の言葉から育成年代における『引退』を考えます。

取材・文●吉村憲文 写真●Getty Images、吉村憲文


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実質『引退』している高校3年生がプロ相手に善戦

 1月27日、大阪のJグリーン堺でシーズン前のキャンプ中だったJ2のFC岐阜は、練習試合をおこなった。相手は地元大阪の強豪興国高校サッカー部である。興国は技術に裏打ちされた圧倒的な個と、組織によるポゼッションを融合させた特徴あるサッカーをする。

 またここ数年、Jリーグに選手を送り続けていることで注目されているチームでもある。とはいえプロ対高校生の試合はシーズン前の調整ではよく行われ、プロにとっては大きなリスクもない手頃な相手ということになる。ところが…。

 予想に反して試合は90分を戦って0-0のスコアレスドロー。しかも明確な岐阜のペナルティエリア内でのハンドを審判が取らなかっただけでなく、少なからず決定機が興国にあった。

「実は試合の後で、レフェリーから『ハンドを取らずにすみませんでした』といわれました」(興国サッカー部・内野智章監督)

 練習試合とはいえ、高校生がプロ相手にジャイアントキリングを起こす寸前だったのだ。しかも驚くことに興国はレギュラー選手ではなく、全員が卒業間近の3年生が起用された。興国は高校選手権の大阪府予選で敗退し、秋の段階で3年生は実質『引退』している。それにも関わらず彼らはプロ相手に大健闘以上の戦いを見せたのだ。

「会場になったJグリーンの関係者が教えてくれたのですが、岐阜のスタッフが『なんや、あの学校。めっちゃ強いやん』と話していたそうです」

 これは高校サッカー部の自慢話ではない。ここに至るまでの興国サッカー部の取り組みがあり、それは今の日本のスポーツの現状を反面教師として映し出しているともいえる。

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