起こってからでは遅い『スポーツ事故』の問題。指導者・保護者が心得ておくべきこと
2017年06月30日
インタビューボール遊び禁止の公園が増えるなかでの対策
サッカーにおける不慮の事故が起きるのは、何も学校や競技に特化した施設施設なかりではない。多くの地域住民が利用する多目的な公園の場合は、どうだろうか。
「一般的な公園、利用目的が限定されていない公園の場合は多少、事情が違ってきます。前述のような競技を行うための施設と比べ、公園では特定の競技を行うための安全性が担保されていません。この場合は、利用者自身が安全を確保する義務があります。
たとえば、幼児用の遊具の隣でキャッチボールをしていて、それたボールが幼児にあたりケガをさせた場合、キャッチボールをしていた者に責任が生じてきます。施設の管理者としては、幼児の近くでのキャッチボールという危険性が高い状態での公園利用を規制する義務が生じます。
上記のような事情や愛媛での事件もあって、都内の多くの公園では、サッカーをはじめとしたボール遊びが禁止されるケースが目立ってきています。これまでお話したような事故を防ぐための策ですが、一部には『公園でのボール遊びを禁止するのはおかしい!』という意見もあるようです。
公園だけの問題ではありません。学校の体育館で、中学2年生の男子生徒が体育館の鉄製の出入口扉をサッカーのゴールに見立てて15メートル程度離れ、ペナルティキックの要領でバレーボールを強く蹴ったら女子生徒の頭に当たり、脳に障害により車椅子生活を余儀なくされたとして訴訟になった事件があります。
やはり、小学校高学年や中学生以上ともなると、それだけ危険性が増すのです。
こうした事態を考えれば、公園の管理者としては事故が生じる危険性が高い公園利用を規制するのは当然です。但し、全ての公園で365日、24時間、幼児の遊び専用にして、ボール遊びを禁止するという方法が、智恵のある方法なのかは考える必要があります。曜日や時間帯で利用できる年齢や、使用目的を変えるなどの対策を取ることを考えるべきだと思います。
たとえば、公園でのゴルフ練習は全面禁止にするも、幼児専用の公園利用は午前中から午後3時までとし、午後4時~6時に関しては小学校3年生までのサッカーボールの使用は可とする、火曜日と金曜日の午後4時~6時には中学生までのサッカーボール使用は可とするなどの方法です。
サッカーを行うのにふさわしい施設が区域内にあればよいのですが、必ずしもそうとは限りません。その場合は、一般的な公園の需要も変わってくるのです。妥協点と折り合いを見つけることが行政の仕事なのではないでしょうか。
また、学校の体育施設を使ってもよいでしょう。例えば、土日のいずれかは一切の部活動を休みにして、地域の方々に開放するというのもひとつの手です。実際、教員が平日だけでなく、休日も部活動の指導に時間を取られ、業務過多になっている問題が現実としてあります。
文部省は、1997年には、週に1日以上は部活動を休みにするという目安を示しているため、この点も解決できるうえに、地域のニーズにも応えられる一石二鳥の解決策になると思います」
※次回は、こうした事故に対する保護者や指導者が留意すべきことについて伺います。
<プロフィール>
望月 浩一郎
(もちづき・こういちろう)
山梨県生まれ。京都大学法学部卒業後、1984年に弁護士登録。専門分野はスポーツ事故、医療事故、過労死・労災職業病事件。弁護士業務の傍ら、数々の競技団体の委員やアスリートの代理人を務める。2014年より日本スポーツ法学会の会長職に就く。著書に『スポーツ法学入門(共著・体育施設出版)』『スポーツの法律相談(共著・青林書院)』などがある。
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