「見る力」と「判断力」を養う。ビジョントレーニングとは
2017年11月08日
コラムサッカーは足元の技術を磨くだけで上手くなるわけではありません。どこで受けてボールを止めるのか、敵や味方の位置を把握し素早く判断できる力も不可欠。そのためには「見る力」を身に付ける必要があります。2015年に元ボクシング世界チャンピオンの飯田覚士さんが視覚能力の高める「ビジョントレーニング」の普及活動を開始。目と体をテーマに、運動する子が力を発揮できる体づくりを指導しています。今回は彼の経験をもとに視覚の重要性を含め、さまざまな話に耳を傾けます。
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、Getty Images、ジュニサカ編集部
一般的に見る力=視力だと思われがち
サッカーのプレーにおいて、『認知・判断・実行』を連続して素早く行うことが重要なことは、周知の事実だ。その中でも、判断や実行は数多く取り上げられる。しかし、認知が語られることは少ない。では、サッカーにおける認知とは何か。視力の良し悪しではない。大切なことは、目から脳へ『どのような情報を入れるか』である。しかし、視覚能力そのものが未発達であれば、どんなに足技に優れていても 実力を発揮することはできない。
海外に『オプトメトリスト』という職業があるのを知っているだろうか?欧米を中心に、国家資格など公的に認められた専門職のことだ。目をうまく使いこなし、脳で明確に見えたものを捉えているかを検査したり、改善をサポートしたりする目の専門家である。目を使って見えたものを脳で捉える視覚能力のことを総合的にビジョンと表現し、その力を健全に高める方法としてビジョントレーニングを行うそうだ。眼科医ではないため、医学的な治療が施せないことはあらかじめ断っておく。
それを日本でやっていた内藤貴雄さんに出会ったことをきっかけに、子どもたちの体づくりに新しく取り入れた人がいる。元ボクシング世界王者の飯田覚士さんだ。今回は、飯田さんに自らの経験をもとに視覚能力の重要性について語ってもらった。
――まず、ビジョントレーニングに出会った経緯から簡単に教えてください。
飯田 現役時代、内藤先生を紹介してもらったことがビジョントレーニングに出会ったきっかけです。最初は動体視力を鍛えるものだろうと思い、パンチが見えるようになるならと軽い気持ちで行ってみたんです。視力など、視覚に関するさまざまな検査をし、先生に伝えられた結果に驚きました。『飯田さんは上目遣いが苦手な目をしています』と指摘されたんです。
実は、アゴが上がる癖があったんです。ボクサーはアゴが急所だからアゴを引くことが基本姿勢。トレーナーにも会長にも『スタミナが ないからアゴが上がるんだ』といわれ続け、体力作りに励んでいたのに、原因は全く違うところにありました。正確には、上目遣いで焦点を合わせる力が弱く、どうしても物を見るときに下に見下ろす角度で焦点合わせをしてしまっているということでした。
だから、アゴが上がっていたんです。半年間ビジョントレーニングをした結果、それが改善され、むしろ以前より上目遣いが得意になりました。目について興味を持ったのはその頃からです。いまも内藤先生が開く講座に参加していますが、そこで、ビジョンを高める能力が子どもの発達期に関係していることを知りました。それでジムを開いたとき、幼稚園と小学生を対象にビジョントレーニングを取り入れたプログラムを作ったんです。
――具体的に『目で見る能力』を、どのように捉えているのでしょうか。
飯田 一般的に見る力=視力だと思われがちです。でも、ビジョントレーニングでは視力以外にさまざまな能力があると考えられています。中心視野と周辺視野、距離感、遠近の焦点合わせ、敵と味方を瞬時に見極める力など、スポーツの観点でいえばさまざまです。たとえば、見たいものに焦点を合わせるのに0.5秒の時間がかかる選手と瞬時に焦点を合わせられる選手とを比べたらその差は明らかでしょう。
サッカーではシュートの確率、プレッシャーに強い弱いなど、いろいろなプレーに寄与します。これは視力ではないため、本人では気づけません。指導者や保護者も知っていなければわからないことです。うちのジムでは、目と体をテーマに、運動する子が力を発揮できる土台づくりを目指しています。
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