理屈抜きに選手を愛せるか――。湘南・曺監督が実践する「怒る」と「叱る」の違い
2018年02月08日
コラム
【昨季Jリーグ前半戦、献身的な姿勢と持ち味であるパスセンスで柏レイソルの好調を支えたMF中川寛斗選手。(写真●Getty Images)】
「いい選手になってほしい」それを理解してもらう
オフ明けに行ったミーティングで、僕はレイソルから期限付き移籍中だったMF中川寛斗を叱り飛ばした。亀川のゴールをアシストしたのも中川ならば、逆転された相手のコーナーキックのときに、ニアポスト付近に立ったままで、与えられた役割を果たさなかったのも中川だった。
「お前はパスをつなぐことには100%集中するけど、それ以外のこと、興味のないことはまったくやらない。言っておくけど、サッカーは得意とする以外のことのほうがはるかに多いからな。いい選手になりたいのならば、そういう部分をちゃんとやれよ」
かなり厳しい口調だったと覚えている。返す刀で他の選手たちにも「お前からも言ってやってくれ。こいつ、自分のことを上手いと思っているから」と大声で訴えた。中川はその場で大泣きしていたが、何も逆転ゴールを奪われた怒りを彼にぶつけていたわけではない。
中川のことは、パスのセンスやテクニックに長けた非常に素晴らしい選手だと評価していた。そうした部分を認めながらも、レイソルのU‐18から昇格してすぐに期限付き移籍でベルマーレに加わっていた中川に、さらに上のレベルへ駆けあがってほしかった。
だからこそ、中川に「自分のことを思ってくれている」と思ってほしいという意味を込めて、叱りながら「いい選手になりたいのなら」という言葉を添えた。怒っているわけではないと、理解してほしかった。
身長が155センチの中川は、彼なりのサッカー観という枠のなかからまったく出ようとしなかった。自分はパスをさばく選手だとか、背が低いからこういうプレーはできないとか、若くして自分で自分の可能性を狭めているところがあった。そうじゃないよ、という話を何度したことか。
昨シーズンのレイソルは前半戦で破竹の8連勝をマークし、J1の首位に立った時期があった。好調の要因は前線から仕掛けるハイプレスで、レイソルに復帰して3年目の中川が一の矢を担っていた。
衰えることのない運動量でボールホルダーにプレッシャーをかけ続け、攻撃に転じるやパサーとなり、前半戦だけでゴールも3つ決めた。心技体のすべてでたくましく成長しているかつての教え子の姿を見ていると、サッカー人生の一部に関わった指導者として、僕の表情も自然と緩んでくる。
【商品名】『育成主義』
【発行】株式会社カンゼン
【著者】曺貴裁
【判型】四六判/256ページ
【発売】2018年2月20日
2017シーズン、J2優勝! 選手育成によって湘南ベルマーレを強靭なチームに作り上げた名将・曺監督による指導論とは。
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