岡崎慎司の成長物語。「どこにでもいるサッカー少年」が本気でプロを目指すまで
2018年06月28日
育成/環境サッカー漬けの日々
宝塚ジュニアでこれだけハードな練習をこなして家に帰ったあとも、慎司少年は兄と一緒にボールを蹴っていた。近くの公園にあったすべり台とタイヤの遊具をゴールの枠に見立てて、ひとりがシュートして片方がキャッチするという練習は日常的にやっていた。
嵩弘さんが小学生の頃からGKとフィールドプレーヤー半々だったこともあり、弟のシュートを受けてはアドバイスもしていた。近所に住んでいたサッカー大好き兄弟と集まって、4人で暗くなるまでサッカーをすることも多かった。
そこまでサッカー漬けの日々だったが、母・富美代さんは「幼なじみと4人で遊んでくれていたんで、共働きの親としては、ホントに楽で助かりました」と微笑んでいた。クラブでも家でも大好きなサッカーをとことん追求できる環境があったことは、岡崎の潜在能力を伸ばす大きな助けになったといえる。
岡崎一家は慎司少年が小学5年生のとき、再び引っ越しをする。宝塚よりやや北西寄りにある三田に住むことになり、宝塚ジュニアに通うのが大変になったが、嵩弘さんも慎司少年もこんなに楽しいチームをやめたいと思うはずがない。片道1時間ほどの距離を、中学3年生までずっと通いつづけた。
「新三田駅が自宅の最寄駅だったんですが、そこから宝塚まで電車で行って、さらに練習場になっていた西山小学校や山手台小学校へ行くのが遠かったですね。家から新三田駅に行くのもすごい坂だったし、練習場所まで行くのも坂道ばっかり。チャリンコこぐのがしんどかった記憶ばっかりが頭に残っています。それを何百回も繰り返したから、筋力とか持久力とかがついたのかな。自分も最後の上り坂ではすごく追い込んだし、足をつけないで登り切ろうとか意識していたんで、そういうところからも頑張る気持ちは養われた気がします」と岡崎が語るように、多少の環境の変化にへこたれたりはしなかった。
それだけ一生懸命サッカーに打ち込んでいたものの、宝塚ジュニアが兵庫県の上位まで勝ち上がることはなかった。兵庫というのは香川真司(ドルトムント)や柏木陽介(浦和レッズ)、米本拓司(FC東京)など優れた才能が次々と出ている地域。少年サッカーも非常に盛んで、小さなクラブチームが簡単に勝てるような状況ではなかったのだ。
のちに岡崎兄弟の恩師となる滝川第二高校の黒田和生前監督も「兵庫はトレセン活動がすごく活発です。13地域あって、神戸や尼崎、北摂(宝塚・伊丹)、阪神(西宮・芦屋)、淡路といった主要地域だけでなくて、岡山や鳥取に近いエリアのレベルも上がってきました。しかも兵庫の土のグラウンドは御影石でできていて固く、ボールが普通以上にバウンドする。だからこそ、テクニックを身につけさせようと小学生年代の指導者は頑張っていました。技術の高い選手がたくさん出るようになったのは、そのおかげだと思います」と説明していた。
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