岡崎慎司の成長物語。「どこにでもいるサッカー少年」が本気でプロを目指すまで
2018年06月28日
育成/環境ダイビングヘッドの原点。山村コーチ「全部頭からいけ」
山村コーチのもうひとつの哲学は「ゴールを狙いにいってこそサッカーだ」ということ。子どもたちにはどんどん点を取ってほしいと思い、シュート練習にかなりの比重を置いた。
「慎司の言っている通り、確かにシュート練習は多かった。全体の7割くらいはやっていたかもしれません。小学生なんだから点を取りにいかなきゃ面白くない。ポゼッションうんぬんなんてどうでもいいから、10点取られても11点取りにいけばいいって感じでゴールに向かわせてました。
慎司には『ヒザくらいのボールだったら全部頭から突っ込んでいけ』とよく言っていました。泥んこ状態の砂場でダイビングヘッドの練習をやることもよくありました。
ドロドロに汚れても関係なくボールに向かっていく慎司の姿は今も印象的です。そういう練習は、あいつの得意分野を伸ばすのに、ちょうどよかったのかもしれないですね」(山村コーチ)
岡崎がヒザくらいの低いボールをヘッドで決めた顕著な例が、2011年9月6日の2014年ブラジルワールドカップアジア3次予選・ウズベキスタン戦(タシケント)の同点弾だろう。南アフリカワールドカップ出場行きを決めた一戦と同じタシケントのパフタコールスタジアムで、彼は内田篤人(シャルケ)の低い弾道の右クロスに迷うことなく飛び込んで頭を合わせた。
あんなヘディングシュートを決められる選手は日本のトップ選手の中でも彼だけ。すべては少年時代からの積み重ねの賜物なのだ。現在の日本代表FWにダイビングヘッドを伝授した山村コーチには、慎司少年との忘れられないエピソードがある。
「小3、4年の頃、50本のダイビングヘッドをやらせたことがあったんです。PKくらいの距離から走って、クロスに合わせて飛びこむというパターンだったんですが、他の子が『もうできへん』と次々と音を上げる中、慎司はどんなボールを何本蹴ってもガムシャラに食らいついてきた。その根性は目を見張るものがありました。それでも、やっぱりしんどかったんでしょう。途中であいつが泣き出したんです。
僕が『お前、やめんのか?』と聞くと、本人は『絶対やる』と睨むように言う。それで続けて50本目まで行き、最後はすばらしいゴールを決めてくれました。今の時代に、あれだけつらいことに耐えられる、打たれ強い子はそうそういない。慎司は悔しさや負けん気の強さを内に秘めて、いざというときに爆発させることができる選手なんだと、あの練習からよくわかりました」
【W杯アジア最終予選でウズベキスタン戦でダイビングヘッドを決めた岡崎慎司。このゴールで日本は南アフリカW杯の出場権を獲得した】
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