「夏休みのうちにどれだけ心身ともに追い込めるかが大切だ」。日本の“夏トレーニング”に対する違和感

2018年07月19日

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休息は選手のためだけでなく指導者のためのものでもある

 では、このバランスが崩れるとどうなってしまうのでしょうか? 前述したように体にかかった負荷が増えるほど、十分な回復をはかるための時間が求められます。しかし、連日ハードなトレーニングが続くと、当然休息が取れる時間は少なくなってきてしまいます。すると、体内におけるストレスコントロールの機能が働かなくなり、心身のバランスがどんどん崩れていってしまうのです。

・疲れていても体は動くから大丈夫
・足が痛いけど、みんながんばっているから休むわけにはいかない
・休みたいけど、休むと試合に出られなくなる

 子どもをこういう思いにさせて、こんな言葉を吐かせていませんか? そして、休む時間を奪っていっていませんか? 子どもは誰だって最初「大したことないよ、大丈夫」と言います。でも、負担は少しずつ溜まっていきます。気づかないうちに、自分では「普通だ」と思っている間に、体や頭や心に想像している以上の疲れが溜まっていることは普通に起こりえるのです。
 
 さらに疲労が溜まるほど回復し切ることが大変になっていきます。無理を重ねてがんばろうとする。でも、ある日ある時、何かのきっかけで、何かが弾けてしまうことがある。これがバーンアウト「燃え尽き症候群」と呼ばれる現象のメカニズムです。

 ケルマン教授は長期休暇の過ごし方について「選手も、指導者も夏休みをとることは必須だ。休みを取るということがシーズンのプランニングにおいて、非常に重要な期間の一つだと言える。日常生活の中で知らずにストレスが積み重なっている。誰もがストレスと向き合える環境と時間が大切で、心身のコンディションコントロールに気を配るべきだ」と対策を挙げていました。これは非常に大事なことです。

 ドイツでは夏休みの1カ月間、長いときは2カ月間チーム練習をやらないことはざらにあります。いかにも日本的な「夏合宿で追い込む」「夏の走り込み」というようなことは考えられません。ドイツの子どもは夏休み中に自分でサッカーをしたいと思ったら、友達と空き地やグラウンドで集まってボールを蹴ったりしています。遊びとして行う限り、それは彼らにとってストレスには全くなりません。大人の存在を気にする必要もありませんから、自分のやりたいプレーをいくらでも試すことができます。そんなとき、子どもたちの表情はとても輝いています。

HAMBURG, GERMANY -APRIL 20:    Kinderfussball: Feature 2004 Hamburg; Finn-Ole JANSSEN, Tom BRASCH, Kamran KARAGAH, Robert SEINRICH, Jan-Philipp PERSCHEL 20.04.04.  (Photo by Nadine Rupp/Bongarts/Getty Images)

 私は日本に一時帰国するたびに、全国各地で講演会やセミナーを開催しています。この夏休みに関する話も、いろんなメディアで何度も書いてきていますし、講演会やセミナーで何度も繰り返し語っています。

 でも、何度話しても、どこで話しても、なかなかすんなり受け止めてもらえません。信じてもらえないか、今一ピンと来ないという反応ばかり見かけます。なぜかはわかりませんが、「一日練習を休むと取り返すのにその倍以上の時間がいる」ということが非常に信ぴょう性の高い言葉として日本人の意識にすり込まれているようです。だから、なかなか周囲に理解してもらえないのも仕方ないのかもしれません。

 2月に、日本に一時帰国した際に聞いたのですが、過去ドイツに留学していた人が指導者をしているとある町クラブの話です。そのクラブでは、ドイツのように「夏休みはまるっと休みにしよう」と思い、実行したそうです。私はすばらしい決断だと思います。

 でも、子どもたちと親御さんたちはどうしたと思いますか?喜んだと思いますか?むしろ逆の現象が起きてしまいました。練習しないことを受けて、何人かの選手が他のクラブへと移籍したそうです。彼らはそのチームにおいてレギュラークラスの選手だったと言います。

①練習をしない
②うまくならない
③ダメなチーム

 こんな図式になったのでしょう。残念ですが、日本ではこうした考えを持つ子どもや親御さん、指導者はまだまだ普通なのではないでしょうか。

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