バルセロナが大苦戦!世界最高峰クラブを追い詰めたFCパーシモンの守備戦術とは?/ワーチャレ取材日記③
2018年08月26日
U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2018【ワーチャレ取材日記①】たった少しの修正で状況が一変!バルサ指揮官が示した修正力。町クラブのパーシモンが見せた戦術的アプローチとは?
【ワーチャレ取材日記②】なぜバルサはうまくいってないのか? 監督が語るその理由
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
調子の上がらないFCバルセロナがFCパーシモンに大苦戦!?
緊張感で会場全体が静まり返った!
7、8、9、10…すでにGKを含めた出場選手全員がキッカーの役目を終えて2巡目を迎えた。そして、14回目の先行はFCパーシモン。ゴール左に蹴ったボールはFCバルセロナのGKにセーブされてしまった。続く、後攻のFCバルセロナは落ち着いてGKの逆を取り、ボールが左側のネットを揺らした。
ピッチに崩れ落ちるFCパーシモンの選手たち。そこに歩み寄るFCバルセロナの選手たち。死力を尽くした者同士にしかわからないピッチでの戦いがそこにあった。ただ冷静に試合を分析すると、五分五分でどちらが勝ってもおかしくはなかった。
序盤のFCバルセロナのパス回しは「さすが!」だった。
自分たちがボールを持つ時間を多くしながら幅を使ってゴールに向かうパス回し。それによって局面ごとに数的優位を作りながらボールを奪われても即取り返せるリスクヘッジを伴ったゲーム展開は、毎年11人制サッカーに切り替わるこの時期から選手たちが取り組む基本的なサッカーだ。まさに金太郎飴のごときバルサ哲学を体現したスタイルだった。
ただ例年と違い、そこにオートマティズムが足らなかった。
そのため、選手たちの戸惑いがパススピードに影響し、対戦相手のFCパーシモンの選手たちのプレスを思ったよりも揺さぶれず、むしろ彼らは時間とともに対応してきた。ディフェンスラインでのちょっとの時間の遅れが、バルササッカーの肝となる中盤でのボール経由に大きく影響した。本来なら余裕を持ってパスを受けられるはずなのに、なぜか1人または2人にプレッシャーを与えられる状況に陥っている。そこからサイドへと避けるようにボールを送ると1対1になる。
そうなると、そのサイドから逆サイドへとボールを展開することが難しく、FCパーシモンにとっては縦方向のパスへの対応と、その後の出方に対するマークをチェックしていればいいので比較的に守備がやりやすくなる。もちろん、それがFCパーシモンの選手たちの狙いでもあった。
取材後の囲み取材で、FCバルセロナのダビド・サンチェス・ドメネ監督は試合の感想をこう語っている。
「苦しいゲームでした。前半はボールをコントロールしていい攻撃ができました。でも、後半は油断してゲームに入ってしまい、ボールをうまく動かせなかったですし、ボールを失う回数も多かったと思います」
苦しい試合展開になったのは、FCパーシモンが狙っていた守備がハマったのは間違いない。彼らはFCバルセロナのビルドアップに対して前線からフォワードだけにプレスを任せるのではなく、ゾーンごとにスライドしてプレスをかけることで自チームのスペースの穴を共有しながら、結果的にそこにボールが入ったとしても対処できるように組織していた。その狙いはFCバルセロナもわかってはいたが、現段階ではそれを突破できるほど組織的にボールを動かせなかった。それは監督のコメントからも感じ取れる。
「相手はとても組織されたチームでした。私たちがボールを持つ時間が長かったですが、相手は中盤で待ち構えてボールを奪うことを狙っていたのだと思います。ディフェンスの選手からフォワードの選手にボールを当てることを一番の目的としていました。そのために中盤の選手を一人下げてスペースを作ることを狙ってはいました」
狙ってはいたが、それ以上の言葉が出なかったということはまだその先の展開に進めなかったということの裏返しでもある。だが、FCバルセロナの状態がどうであれ、FCパーシモンの選手たちの戦いは全国の町クラブにも希望を与える内容だった。
序盤は確かに「FCバルセロナ」に名前負けして萎縮してしまった感はあった。しかし、時間の経過とともに普段通りの彼らのアグレッシブな戦いができてきた。前半の終盤からは1対1の肉弾戦にも臆することなく五分の戦いを見せていた。そして、それを試合終了のホイッスルが鳴るまでやり続けたことが、FCバルセロナを追い詰めた大きな理由の一つだった。
何より彼らは「ただ追いかけ回す」だけでなく、戦術的に組織的に動いて見せた。この大会でこれまでFCバルセロナを追い詰めてきたのは選抜チームが多く、体力任せにボールを追い回す傾向が多かった。しかし、FCパーシモンは町クラブの当然のやり方としてチーム全体で戦術的に戦った。
結果的にPKで負けてしまったが、後半から見せた彼らのパス回しはFCバルセロナのお株を奪うような展開だった。それは中盤のボランチ一枚が必ずチームのおへそにポジションを取り、サイドから受けたパスを逆サイドへと展開しながら確実にボールを前進させ、相手選手が少ない方からチャンスを作っていたからだ。だから、彼らの実力からすれば逆転するチャンスも十分にあった。
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