指導者たちが抱えるリアルな悩み。子どもの安全面、保護者の経済的負担…ジュニア年代に「遠征」は必要か? /指導者座談会5【9月特集】
2018年10月03日
未分類9月の特集のテーマは「改めて考えたい”4種年代”の問題点」である。今、ジュニア年代で何が起きているのか?現場に立つ指導者3人の方々に集まってもらいジュニサカWEBチームを含む6人で座談会を実施し、4種年代の問題点を挙げていった。第5回のテーマは「ジュニア年代の遠征」についてである。保護者の経済的負担がかかる遠征は本当に必要なのか?拮抗した試合環境を作るにはどうしたらいいか?そんな議論が展開された。前回(その練習試合、本当に必要ですか? 「育成」とは何か)の続きからお届けしていく。
■座談会メンバー
アーセナルサッカースクール市川:南里雅也
大豆戸FC:末本亮太
FC大泉学園:小嶋快
ジュニサカWEB編集長:高橋大地
ジュニサカWEB編集部:中澤捺生
ライター:木之下潤
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之、山本浩之

強豪クラブが拮抗した試合をするには時に遠征が必要になる
木之下「レベルが拮抗した環境づくりが現状はあまり明確化されていないから、指導者も保護者も論点とは違う意見を言ったりしているのかなと感じます。
そのヒエラルキーの部分にもつながってきますが、例えば関東大会やトップリーグに絡んでいるチームはその都道府県内でかなりの移動を余儀なくされる現状があると思います。そこは東京都でいえば、ブロックリーグに所属しているチームにはあまり関係がありません。なぜなら地域の移動で済むからです。
でも、トップリーグに属するほど移動が必須で、そこはクラブや保護者への負担が大きくなっていきます。これは、きっと避けられない問題です。経済面でも、安全面でも、心配事が増えるはずなんです。
関西のある強豪クラブを取材した際、強化部の担当者と話をしたのですが、『もし経済的な援助を受けられるとしたら何が欲しいですか?』と質問しました。それまでの流れがあるので、今話すと唐突ですが、私はハード面の問題、ようは『グラウンドが欲しい』『人工芝でプレーしたい』という答えが帰ってくるかなと思っていました。
でも、意外にも『遠征用のバスが欲しい』という返事でした。つまり、強豪クラブが拮抗した試合を行うためには、遠くまで遠征しなければならない現状があるんです。そのクラブは関西エリアを回らないと拮抗した試合ができないことがあって、『遠征用のバスが欲しい』ということにつながっているんです。
だから、強豪チームは試合を転々とするから移動の問題が大きいのかな、と。そういうことがあり、強豪クラブと地域のクラブはそもそも抱えている問題が違うのかなと思いまして、その項目を取り上げさせてもらいました」
小嶋「ちょうどその問題に向き合っているところです。うちも基本的に1時間圏内で試合を組んでいます。東京といてもほとんど埼玉なので南側か、とんでもなく西側に行かなければ都内だと1時間圏内で済みます。むしろ埼玉の方に入った方が近いです。
最近は合宿以外の宿泊大会みたいなものも増えました。クラブ同士の付き合いもあったりしますが、うちは断っています。でも、ちょっと参加してみたい気持ちもあります。というのも、うちはレベルが上の子と下の子の意識の差が大きいので試合経験という面で難しいところがあるんです。上のレベルの子のことを考えると、少し遠出して強いチームと戦うのも刺激がありますが、そうすると保護者への負担も考えてしまいます。
毎回、試合の送迎のたびに駐車場代や高速代がかかったり、すごく経済的にも負担をかけています。そういうところも減らしていかないと、とは感じています」
木之下「トップリーグで1部、2部を作れば、この問題は避けられないのかなと思っています。リーグ戦化に進んでいる今の段階だからこそ、前もってこういう声を上げておくと、例えば何らかの助成金がクラブに落ちるような流れが作れるのではないか、との思いも少なからずあります。今後のクラブの方針がありますが、ある程度力のあるチームは地域では済まないので、移動の問題は避けられないか、と」
小嶋「結構、ここがポイントで『うちのクラブに入るか入らないか』を決めている保護者さんもいます。1時間以内だったら問題のない範囲だと思っていても、『もっと近場でやれるでしょう』という保護者もいらっしゃいます。『遠くに試合に行くこともあるから入らない』という保護者さんもいらっしゃいますし、『いろいろ試合に行くから入る』という保護者さんもいらっしゃいます。『入ってみたらあちこち行くからやっぱりダメだな』というふうに感じて退会される方もいらっしゃいます」
木之下「結果的に、リーグ戦を整備するとこういう問題は現実的に起こります」
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