「止める」「蹴る」「運ぶ」を疑う。大阪の強豪・RIP ACEの育成哲学
2018年10月26日
コラム
「戦術と動作は一体のもの」
長友佑都選手がツイッターで指摘したように、サッカーをプレーしているのに、一つの技術だけを切り離してトレーニングを行うと、サッカーのプレー動作に関連性や連続性が身につかないのは当たり前のことだ。監督も試行錯誤を始めた当初は動作だけを追求したが、「動作だけを追い求めると、どんどんサッカーから離れていった」と振り返った。
自身でも『戦術』的な視点が抜けていたと、反省した過去を語った。
「プレー動作は強豪クラブを圧倒しているのに複数でハメられ、ボールを取られて失点する。ほとんど負けパターンが同じだったんです。周囲のすばらしい指導者の方々から『お前らのクラブは最近すごく良くなっている。でも、勝負となったら簡単にハメることできるで』とアドバイスをくれる指導者もいました。今でも尊敬できる方々で、いつも試合の後は感想戦をし、お互いの考えも伝えます。それらを、毎回自チームコーチ陣で話し合い、動作はサッカーの一部分であることを確認・認識しました。サッカーの戦術的な狙いを持ったプレーがあって、その動作があるのです。私たちの結論としては『戦術と動作は一体のものだ』と考え直して、ブラッシュアップしていった結果現在のスタイルになりました」
守山監督がぶれずに大切にしていることがある。「チームとしてサッカーがうまい」ということは、「選手がサッカーを知っていて、プレーがうまい」ということだ。
「サッカーをするのだから目的があって運ぶを選択する。例えば、その状況においてドリブルが必要だからそうするのが自然なのだと考えています。そのドリブルがチームに優位な状況を作り、全員でゲームを動かし、ゴールを取る。私たちは『ここはボールをどこに運んだらチームが得する?』、『ここはパスをしたら損しない?』というように、サッカーのゲームをする上で損得を一つの判断基準として声をかけています。だから、ドリブル練習のようなゲームと関連付けできないトレーニングはしません」
そのような試行錯誤を繰り返し、10年前から独自の育成哲学を貫いたからこそ今の指導スタイルがある。昨今ではJユースや全国の強豪校に数多くの選手を輩出し、このクラブ出身の選手が活躍している。それはプレーに不可欠な要素を切り離すことなく、関連性・連続性あるものとしてトレーニングに落とし込んでいるからだ。
「目の前の子どもたちがサッカーをしている姿を見れば必要なこと、足らないことはわかります。試合で困った状況に陥ったときに打開するプレーの選択肢を、練習の中に何気になく落とし込み、彼らに身につけさせるのが私たちコーチの仕事だと思っています。そのときに子どもたちが『運ぶ』ことに困っていれば、それを強化する練習メニューを組むし、増やすでしょう。ただし、一人だけのプレーもあれば、複数のプレーもあるのがうちのやり方です。もちろん、子どもたちには事細かに伝えません。私たちコーチがトレーニングの中でメッセージとして送ります」
そう口にすると、守山監督は「今日は運ぶをテーマにトレーニングをやります」と言い残し、子どもたちのもとに向かった。
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