「目指すサッカー」がない指導者が明確な言葉を子どもに伝えられると思いますか?【10月・11月特集】
2018年10月29日
未分類10月・11月の特集テーマは「ジュニア年代の練習はどう組み立てる?」だ。どのようにしてトレーニングを構成すればいいのかが分からない…。そんな悩みを抱えている指導者も多いのではないだろうか? 「トレーニングの作り方を考えるためには、まず『あなたはどういうサッカーをしたいんですか?』が指導者自身の中で定まらなければ無理だと思っています」。そう語るのは長年、スペインで指導者として活動し、日本人最年少でスペインの上級指導ライセンス(日本のS級に相当)を取得した倉本和昌氏。トレーニングを作成する前提として指導者はまず何を考えなければいけないのか? 倉本氏が噛み砕いてお伝えしていく。
【10月・11月特集】「トレーニングをデザインする」
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
※写真はイメージです。選手及びチームは記事の内容と関係ありません。
多くの指導者が「理想のサッカー」をイメージしていない
木之下「10月の特集企画は『トレーニングデザイン』をテーマにしています。日本では、まだサッカーについても、トレーニングについても体系化されておらず、多くの指導者がどうすればいいのかがわからないのが現状です。そういう指導者のためにも少しでも噛み砕いて伝えられたらと思っています」
倉本「トレーニングの作り方を考えるためには、まず『あなたはどういうサッカーをしたいんですか?』が指導者自身の中で定まらなければ無理だと思っています。講習会を開く時、最初に受講者にしてもらうことは自分のベストイレブンを選び、どんなサッカーをしたいかを考えてもらうことです。システムも含めて、3分でまっさらな紙にそれを書いてくださいとお願いします。
でも、驚くことにそれを書けない指導者がたくさんいるんです。
ということは、普段から11人での理想のサッカーをイメージしていないわけです。現代の選手だろうが、昔の選手だろうが、指導者自身の頭の中にやりたいサッカーがあるのであれば、それに合う選手を選び出せるはずなのですが、たくさんの指導者が普段から『こういうサッカーがしたい。だから、こういうふうに子どもたちを育てたい』というイメージを持っていないことを発見したんです。
『フォワードにはこういうふうにプレーをしてほしい。だったら、中盤の選手にはこんなプレーをしてほしい。それならシステムはこうで、監督としてはこういうふうに仕向けていきたい』と、いつも考えを張り巡らせていたらすぐ出てくるはずです。
でも、パッと出てこない!そのような監督やコーチが選手に明確な言葉でサッカーを伝えられると思いますか?その時点で言語化もされていないし、明確にできてもいない。現実として曖昧な考えのまま話をしているので、子どももその指導者のサッカーを理解できるわけがありません。もちろん、講習会ではここまではっきり言うことはありませんし、そうなっていくように導いていきます。
ただ、『自分の思い描くサッカーを明確にしていないことは認識してください』と伝えます。そもそもベストイレブンなんて何でもいいわけです。重要なのは、どんなサッカーがやりたいかという部分。それがあれば、システムやポジションごとにどういうことを伝えたいかは自然に生まれてきます」
木之下「そうなんですか?なかなか自分のやりたいサッカーが出てこないんですね。それは驚きです」
倉本「今年からコーチのコーチ(指導者の指導者)としてのフリーで活動をしていて、400人以上の指導者に対して何らかの講習会を開いていますが、約40%の指導者がスムーズにベストイレブンと指導者の思考するサッカーを書き出す作業ができません。もちろん、サッと書ける指導者もいます。
でも、結構な数の指導者が自分のサッカー観が自分でよくわかっていません。それなのに、現場では『こうしろ』と言っているわけです。それでは、子どもが理解できるわけがありません。
最近は『言語化しなさい』と言いますが、そもそも『言語化って何?』という話なんです。『言語化って何で必要なんですか』と質問すると、『その方がいいんじゃない』と答えるくらいのものなのです」
【長年、スペインで指導者として活動してきた倉本和昌氏。帰国後は大宮アルディージャと湘南ベルマーレでアカデミーコーチを務めた。現在はスペインと日本での経験を活かし「指導者の指導者」として優秀なコーチを育成するサポートをしている】
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