ボールにふれずに試合が終わって 「サッカーが楽しい」と思えるか? 練習メニューを決める前に考えたいこと
2018年11月14日
サッカー練習メニュー世界トップクラスの選手を輩出し続けている育成大国ドイツ。なぜ、優秀な選手を育てることができるのか。その理由の一つに年代に応じた理論的なトレーニングの考え方がある。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)を持ち、15年以上現地の町クラブで指導を行う中野吉之伴氏に解説してもらった。
『ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.42』より一部転載
構成●木之下潤 文●中野吉之伴 写真●ジュニサカ編集部、Getty Images
【1/22トークイベント】中野吉之伴氏×末本亮太氏『ドイツサッカーの育成文化をどう日本に落とし込むか』
練習の中でゴールを使う機会は多くなければいけない
「サッカーは複雑なスポーツだなぁ」
そう、思ったことはありませんか?
日本では様々なトレーニング本が数多く出版されているし、インターネットを検索すれば瞬時に世界中のサッカー情報に触れることができます。「ドイツ流」「スペインに学ぶ」「南米直伝」など、どれもじっくり読むと、興味深い内容が含まれています。
しかし一方で、あまりにいろんなキーワードや用語が溢れかえっているという現状を指摘しないわけにはいきません。一体どの情報が必要なものなのか、どれだけのことをやらなければならないのか。気を配らないと迷子になってしまいます。
そもそも、サッカーとはそんなに小難しいスポーツではありません。私のA級ライセンス講習会の指導教官で、DFB指導者育成の第一人者であるベルント・シュトゥーバーはこうした問いを一蹴しています。
「情報や知識は使いこなせなければならない。そして、まずサッカーにおいてベースとなる出発点は、いつでもピッチ上のゲームの中にあることを忘れてはいけない」。
本来サッカーとは、ボール一つとゴール二つあれば、誰にでも、誰とでも、自由に楽しめるスポーツなのです。ドイツが総力を挙げて取り組んだタレント育成プロジェクトにおける大事なキーワードの一つが「サッカーをしよう」というものでした。いろいろな要素で細かくぶつ切りにされ、結局「何のためにやっているんだ?」と子どもが興味をなくすような練習ではなく、ゴールとボールへの純粋でひたむきな思いを尊重し、そこから生まれるプレーを見守り、チャレンジすべきプレーとやってはいけないミスを辛抱強く伝えていく。
時代が変わり、戦術やシステム論が発達して、要求されるフィジカルや技術に変化が見られたとしても、サッカーのゲームにおける根源的な要素である「ゴールとボール」は中心軸から外れることはありません。だからこそ練習においても、ゴールを使う機会は多くなければならないはずです。
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