怒る指導はドイツでもタブー。子どもが答えようがない叱責はいらない【4月特集】
2019年04月17日
育成/環境必要な叱責と無駄な叱責があると思っている!
——『自分は叱責しない』と心に決めた出来事が何かあったのですか?
荒岡「高校までは学校に行って、授業を受けて、その後はサッカーしたり塾に行ったりするだけの毎日を過ごしていました。大学に入って初めて外に出て自由にいろんな人と関わったりする機会を持ちました。自分の考えで行動する機会を得たんですね。
一方で、指導の現場で子どもたちが何かをしたいときに、私の顔をうかがいながら『やっていいのかダメなのか』を判断していたり、プレーしていても失敗したらコーチや親のことを見たり。大学生として自分の考えで行動しなければいけない立場と、グラウンドでの子どもたちの立場がオーバーラップしたというか。そこで『叱責するような指導は良くないのかな』という思いが芽生えました。
私のまわりには『自分が思ったのならまずやってみたら』という大人が多く、子どもたちにもそういう環境が必要だと思いました。でも、日本で指導した半年間、そういう環境は少ないのかなと感じていました」
——そういった関わり方はスポーツにおいても学生生活においても実社会においても非常に重要です。教えてくれる人と学ぶ人との関係では、そういう環境が学ぶ側にとって吸収できる場合もあれば、半減する場合もあります。日本でコーチとして関わっていたときに、先輩指導者から言葉をかけられたり、行動を示してくれたりといったことで印象的なことはありますか?
荒岡「日本で指導していた半年間でのことは、正直あまり覚えていません」
——そういう思いを認識した上で、今はドイツにいらっしゃいます。ドイツでも叱責する指導者とそうでない指導者といると思いますが、レベルが上がっていけばその使い分けがあるのかという点は気になります。
荒岡「雇われているコーチは、どう接したらいいのかを考えながら子どもに関わったり振るまえたりしているという印象です」
——多少の給料をもらっているコーチだ、と。
荒岡「給料というと、私もドイツ全土を把握しているわけではないので自信がありませんが、私の知っている評判が良いクラブで雇われているコーチは、必要に応じて感情を出しながらも無駄な叱責はしません」
——日本では「褒めるのがいい」「怒るのが悪い」という二軸で語られることが多いです。でも、時には怒るのも必要なことです。もちろん叱責の仕方も重要です。感情を表に出すこともサッカーには大事なことなので、指導者がそれを認識した上で時にパフォーマンスとして出す場合もあるのかなと思います。それに知り合いの優秀な監督たちもそう言っています。褒めると怒るのと割合は大切ですが、やはり両輪だと思います。
荒岡「私が話しているよくない叱責は、無駄な叱責のことになります。なんと表現していいのかはわかりませんが、必要なのは教育的な役割を担っている叱責だと思います。無駄な叱責というのは、例えば技術的なミスをしてしまったときに『失敗したことを子どもたちが一番よくわかっている』のに外から追い打ちをかけるような声かけのことを指すのかなと思います。子供たちにとっては答えようがないことに対する叱責を無駄な叱責というのではないでしょうか。
私がいいと思っている指導者でも怒る場面はあります。そして、その場面や内容に目を向けると、人としてやってはいけないことをしてしまったり、ルールが守れなかったり、ミーティング中に落ち着いて話が聞けなかったり、他の子どもたちに罵声を浴びせたり、事前に決めていたことに対してやろうとする姿勢が見られなかったりと、そういったことです。子どもたちが答えようがないような外からのアプローチは無駄な叱責、必要のない叱責だと思います」
>>インタビュー第二弾は4月24日(水)配信予定!
<プロフィール>
荒岡修帆(あらおか しゅうほ)
ライプツィヒ大学・スポーツ科学科に在籍。高校卒業後は理学療法学科に進学したが、欧州を旅する中で多様性に惹かれて渡独を決める。RBライプツィヒにインターン生として入り、主にU9チームを担当しながら指導を学んでいる※HP/twitter
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