「できるだけ具体的な指導を…」と意気込みすぎるのは半分正解で半分間違い【サッカー外から学ぶ】
2019年04月18日
育成/環境
【ビジネスコンサルタントの細谷功氏】
相手の抽象度が変われば指導する際の言葉も変わる
教える際に、「できるだけ具体的に」と思っている人が多いと思うが、それは半分正解で、半分間違いだ。
「上司が部下に資料作成を命じるときのことを考えてみてください。『こんな感じで』とざっくり伝えられて自由度が高い方が燃えるという人がいれば、『A4何枚で最初のページにはこれを書いて次はこうで、文字の大きさはこれくらいで』と、事細かに伝えられた方がいいという人もいます。これは単に性格の違いというよりは、その人の適正な抽象化の度合いの違いです。抽象度が高い指示を志向する人に対して具体度の高い指示をしてしまうと考える余白を奪われ、自由度が制限されたと感じてモチベーションが下がります。反対に具体性を好む人に抽象度の高い指示をしてしまうと『何から手をつけていいかわからない!』というパニック状態になってしまうことも考えられます」
つまり、自由度は受け取る側の抽象度の志向性と比例している。そしてそれは、習熟度と重ねて考えることもできる。たとえば経験豊富なプロの選手には抽象度の高い指示でもこちらの意図は伝わりやすい。これは受け取る側の選手の抽象化する力が高いためだ。
「タクシーに乗って、行き先を告げた後に『どの道で行きますか?』と聞かれて戸惑うことがあるのですが、そこはプロである運転手さんの考える最短ルートでお願いしたいところですよね。こちらの要望にできるだけ答えたいという姿勢は見えますが、こちらがプロとして期待することと、運転手さんの受け答えにミスマッチが生じてしまっています。サッカー選手でも普段からチームのコンセプトを理解してプレーしている選手だったら、交代時に監督は『とにかく点を取ってこい!』と伝えるだけでいいかもしれない。抽象度が高い伝え方が必ずしも正解ではありませんが、コミュニケーションの質を高めようと思うと、自ずと概念を抽象化することが必要になります」
伝えたいことを抽象概念化したうえで、それを実現するためにやるべきことの具体度を高めていく。相手の抽象度をしっかり観察して、それに合わせた抽象度で、抽象的、具体的な指示が出せる。これがもっとも伝わりやすいコミュニケーション方法ということになる。子どもを相手にするジュニアサッカーのコーチたちは、「自分にとっての具体」を押しつけるのではなく、子どもたちの抽象度を探るためにも自分の思考を抽象化して、適切な伝え方を見つける必要がある。
サッカーに限らず、スポーツ指導では、指南書や指導法の教本など、具体のお手本になるものが溢れている。一方、抽象度を挙げるための手段は少なく、そもそも抽象度を上げる必然性や、そのメリットに気がついている人も少ないだろう。
「具体度は元々高い人が多いからいいとして、抽象度はどうすれば高まるのか?」
細谷さんによれば、抽象度の高い人は自分とは違う分野、世界の事柄に共通点を見出すことができ、一方で抽象度の低い人は「違い」に目が行きがちだという。
「抽象化して考えるためにはまず、共通点はないか? と考えることが大切です。経験した世界が狭いほど、ほかの世界のことがわからず、物事を個別の事象としてしか見られなくなります。サッカーコーチが抽象度を身につけたければ、一番はサッカー以外の世界をたくさん経験して、その世界との共通点を考えることです」
経験や情報量が同じでも、抽象化できる人は具体レベルで物事を見ている人よりも広い視野で物事をとらえ、それを専門分野に活かすことができるようになる。
子どもたちに「サッカーだけできてもいい選手にはなれないよー」と言っている大人たちもまた、サッカーのことだけ勉強していてもいい指導者にはなれないのだ。
次回は、サッカーは「教える」ものかなのか、考えるサッカーを「教える」矛盾など、サッカーの指導現場で起きている問題を「自己矛盾」というキーワードで読み解く。
細谷功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント。コンサルティング会社にて業務改革等を担う。近年は国内外で企業や各種団体、大学等に対してセミナーや講演を実施。主な著書に『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』、『「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する』、『自己矛盾劇場 ―「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する』などがある。
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