子どものため、それとも学校のため? “誰がために部活はやる”のか
2019年07月17日
育成/環境

【内田良准教授は「国から通知を出されることは現場の負け」という】
学校の仕組みそのものにマネジメントがない
――「NO」と言える気運が高まってきたっていうのは、なにか要因としてあるんですか?
内田「実際のところは、ここ20年ほどの間に先生方もいっぱいいっぱいになってきたのではないでしょうか。まだ30~40年前は、もっと先生の働き方にゆとりがありました。多少、土曜が部活でなくなったとしてもまだやりがいはあったんでしょうけど、今は部活が過熱して土日は潰れるし、平日も忙しい。半分くらいの先生は気持ち的にもういっぱいいっぱいという感じなんだと思います。その中でSNSが出てきたわけです。でも、職員室の中では叩かれる。多分、今もそうでしょうが、『部活やりたくない』と口にすると『えっ、なんのために教師になったの?』と。だから、SNSでつぶやくと『いや私も、私も』とドッカンドッカン盛り上がるんです」
――それだけ盛り上がるのであれば、改革の方向に進んでもいいように思います。
内田「部活を消滅しようとすると『子どものためだということをやらないの?』と否定されちゃいますから、改革は思いのほか難しいんです。だから、職員室ではなく、SNSで盛り上がり、国もガイドラインを出すようなことになるわけです。組み体操と一緒です。現場では変えられません。実際の現場では、みんなで盛り上がって、感動して、『組み体操めっちゃいいね』と。組み体操も、国が動くのに1年半かかりましたから。
『1年半の間、世論が盛り上がった割に、事故件数は減っていない。学校は変わらない一方で、世論はおかしい、おかしいという』みたいな。それで当時の馳浩文部科学大臣が『もう、仕方ない』という風に動いたわけです。でも、また『組み体操ってこれがいいもんだ、子どものためだ』と走り出すと、やっぱり世の中がおかしいという風潮に流れても、現場の勢いにブレーキはかけられません。だから、国が通知を出すことになりました。私は通知を出されることって、現場の負けだと思うんです。国からの通知で『体罰をやめなさい』とか出ますが、個人的には『かっこ悪い』と感じています。『そんなことを国に言われてどうするの?』と思いませんか?
例えば、置き勉なんて変ですよ。『学校に荷物を置いて帰ってはならない』という。実は、あれも国から通知が出ました。冷静に考えてみてください。『荷物を置いて帰っていいよ』と国がわざわざ文書を出しているんです。私から見ると、学校自らが国からの指示待ち状態になっているんですよね。本当にかっこ悪い。でも、学校がもうそのメンタリティになってしまっていると思うんです。
ちょっと話が脱線しましたが、学校内での活動も自分たちで安全を考えられなくて、『子どものためになればいい』とか、『盛り上がればいい』とか、『みんなが涙すればいい』みたいな。結果としても、そういう風に走ってしまっているとうことですよね。だから、学校の日常にマネジメントという手法を取り入れる必要があるんです」
※7月特集・内田良准教授のインタビュー第3弾は7月24日に公開予定です
<プロフィール>
内田良(うちだ・りょう)
1975年、福井県福井市生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科の准教授。専門は教育社会学。学校管理下の組み体操や、柔道を含むスポーツ事故、いじめや不登校の教育課題、部活動顧問の負担など、子どもや教員の安全・安心について研究している。WEBサイト「学校リスク研究所」を運営。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)などがある。twitter
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