唱え続けられる「部活動=勝利」の呪文。両者が決別する日はやってくるのか
2019年07月24日
育成/環境7月の特集は「夏のトレーニングを見つめる」と題し、学校リスク(スポーツ事故、組み体操事故、転落事故、体罰、自殺、2分の1成人式、教員の部活動負担・長時間労働など)をテーマに研究されている名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良准教授と、文武両道を掲げて全国大会でも素晴らしい結果を出している國學院久我山高校サッカー部の清水恭孝監督の二人を取材した。前回に引き続き、今回も内田先生にはサッカーに限らず、学校部活に起こる問題を中心に、「なぜ日本のスポーツ環境が変わっていかないのか」という点について深く語ってもらった。
【7月特集】夏のトレーニングを見つめる
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部

子どものためという大義名分を出されたら…
――現場レベルで見ていくと、例えば熱中症対策も知らないだけなので、むしろコーチに講習会だとか、学ぶ機会を作って理解を深めていけば事故を減らせることもあるのかなと思ったりします。サッカー協会もガイドラインを出していますが、ルールとして変えようとすると時間がかかって遅いじゃないですか。「現場に下りてくるときは何年後?」みたいな。そういう話になるので、それでは子どものためによくないと考えると、現場レベルでやれることもあると考えていくことが大事です。そういう風に動いている自治体ってないものですかね?
内田「それがないから『国が通知を出す』という風に理解したほうがいいと思います。夏の炎天下でも普通にやりますから。でも、それは勝つためですよね、やっぱり練習を休んだら負けるよねというマインドになってしまいます。何人も倒れていることがデータとして出ているのに、『倒れたって仕方ない』って、あるいは酷い場合は『お前が弱いんだ』みたいな話になったりもするでしょう。
現状は『勝つためには練習量は多いほうがいい』ということが前提で学校部活が動いていますので、安心安全ベースでスポーツを考えると『暑いから練習をやめる』という発想はなかなか根づかないでしょう。もちろん、先生方もみなさん熱中症の知識くらいは知っています。でも、やってしまうんです。そこが非常に難しい。もちろん、やりたくない先生方は暑いことを理由にやめる方もいます」
――そこでブレーキが効かない風になる訳ですね。
内田「そうですね。自分たちがやめていて、でも隣の学校でやっていたら…」
――そこと競争しちゃいますもんね。
内田「だからこそ、みんなで守らなければいけないんです。私はずっと、みんなで守るルール作りをしなければいけないと言い続けています。でも、隣の学校、あるいは自分の同じ学校の中でも隣の部活を見て、やっぱり活動しているほうに引っ張られてしまうのが現実なんです。『もう国のガイドラインはいいから活動をやりましょう』みたいな風に流れてしまいます。どうしてもそうなる」
――たしかに隣の学校というより、隣の部活で活動しているところがあればそれが自分たちも活動する理由になりえます。
内田「スポーツに関わればやっぱり勝ちたい! しかも、そこに『子どものため』という大義がついてくるわけです。でも、安心安全をベースに考えたらそれは『子どものためではない』わけです。教育とか、部活とかって子どもにいいもんだということを前提に動いていますから、そこが部活改革の難しいところです。
少し余談ですが、去年は本当に暑かったじゃないですか?
もう部活をやるような気温ではなかった。それなのに、夏休み中に先生がわざわざ学校に出向いて部活をやり、しかも子どもが熱中症で倒れているということが何件も起こるわけです。働き方改革をしていて『休め』という風に世間でも騒がれているのに、わざわざ夏休み中に部活をして子どもが倒れている」
――夏になるたびに悲しい気持ちになりますよね。
内田「練習だけでなく、そもそも大会自体が、最も熱中症のリスクが高い時期に行われています。甲子園やインターハイ、全中、いずれも同じです」
――勝つこと、子どものためを盾に言っていることとやっていることが全然違う場合がスポーツの現場では多々あります。もちろん、すべてそういうことばかりではないですけど。
内田「だから、本丸は学校なんです。学校の中ですよ」
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