サッカーを愛することから始まる。イングランドDNAによる指導方法
2019年10月09日
育成/環境イングランドFAは、2014年に「コーチメンタープログラム」をスタートした。地域の指導者やチームをしっかりとサポートできる人材「コーチメンター」を育成することが目的である。そのプログラムのインストラクター「サポートメンター」として250名以上の指導者やチームをサポートした実績を持つポール・ニアリー氏に取材する機会を得た。彼は、イングランドFAのコーチインストラクターとしてレベル1・2などで講師も務めている。
現在はイーストアングリア大学のサッカー事業担当長として、サッカーを通した学生の人材育成および大学の付加価値高めることに尽力しているという。イングランドFAが認めた20名ほどしかいないコーチメンターは「指導には何が大事だ」と答えるのか。この10月特集の第二弾からは、インタビューを全公開したい。
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之
イングランドが指導で大切にしているもの
——最初に、イングランドは何を大切に子どもたちの指導をしているのですか?
ジュニア年代では、とにかくサッカーを愛してほしい、ボールと触れ合うのを楽しんでほしい。イギリスはそれを大切にしています。では、どうするか。それは試合に則したトレーニングを行うこと、試合を反映したトレーニングをすることです。試合に対してリアルでありながら、おもしろい練習をするということです。できるだけボールに触れさせ、コーチの指導は最小限にして選手たちが何かを発見できるトレーニング内容であることを心がけています。
つまり、選手たちが主体性を持ったトレーニングを数多く行うということです。シナリオを設定し、自分たちで考える状況を作ること。例えば、「私たちは2対0で勝っている状況だからこういうプレーをしよう、負けている状況だからこれだけのプレーをしなければならない」と。そういう状況をリアルにイメージし、シナリオを作りながら練習メニューを組んでいます。私たちはそういう風にしています。
——現在のイングランドサッカーのDNAはどのようにできあがっていったのですか?
現在のDNAを確立するためにドイツなどいろんな国に勉強に行き、各国のいいものを取り入れました。その中で、イギリスの選手にとって何が合っているのか、何が正しいのかを試行錯誤の中で作り上げていきました。
——試行錯誤があったわけですね。例えば、試合環境でいうと日本のジュニアはワンデイマッチが多く、選手と指導者の価値がどうしても勝ち負けに偏りすぎる傾向があります。それゆえに「アイディアを大事にすること」がないがしろにされているところがあります。イングランドでは、ジュニアの試合環境はリーグ戦が整っているんですか? そのあたりのことをうかがいたいです。
イギリスでも勝つことが重要とされています。だから、日本と同じように勝ちにこだわるのは当然です。だけど、日本でクリエイティブな選手、チャレンジする選手が育つかといえば、それは違うかもしれないと感じています。例えば、コーチから「点を取ってこい」と指示があったとします。でも、その選手がシュートを外した直後に「どうしてそこでシュートを打つんだ」と怒ったりしたら、それは言っていることとやっていることが違うことになります。シュートを打たないと点は入らないけど、シュートを打ったからと点が入るわけではありません。そこで自分のプレー哲学、「こういうプレーをしてほしい」ということから離れてしまう指導はイギリスではしません。
そこが日本と違うのかなという印象を持っています。
もちろん、イギリスにも怒鳴ったり怒ったりするコーチはいますが、結局そういう指導者たちは自分の哲学から離れたことをしているわけです。チャレンジさせといて失敗したら「何をしているんだ」というのは指導哲学に一貫性がありません。そこで子どもたちがクリエイティブになるかならないかが決まっていきます。私たちはいつもチャレンジしたらその精神を褒めるようにしています。そうすると、子どもたちが「次もやろうぜ」というマインドになっていきます。イギリスにもリーグ戦やトーナメントはありますが、そういう試合環境よりどういう指導をするかのほうが大事だと思っています。
——ちなみに、イギリス全土のチームを集めるような全国大会はありますか?
いえ、ありません。
カテゴリ別新着記事
ニュース
フットボール最新ニュース
- 近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.24
- 「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.24
- 【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.24
- リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.24
- 前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.24
大会情報
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 大阪大会】フォトギャラリー2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2024.03.09
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 愛知大会】フォトギャラリー2024.03.09
お知らせ
人気記事ランキング
- 「2024 関東トレセンGKキャンプ」が開催!
- 関東選抜メンバー発表!【関東トレセン交流戦U-15】
- 「2024 関東トレセンキャンプU-14」参加メンバー発表!
- 「2023ナショナルトレセンU-13(後期)」参加メンバー発表!【東日本】
- いま注目のセレッソ大阪・柿谷曜一朗選手特集!! 1対1を制する超実戦的フェイントと少年時代の思い出
- クラブとともに戦い、走り続ける背番号13――。FC岐阜の永久欠番
- 2015年度 ナショナルトレセンU-12関西(1/22-24開催)の参加メンバーが発表!!
- 「2024 JFAトレセンU-12関西」参加メンバー発表!
- 指導者たちが抱えるリアルな悩み。子どもの安全面、保護者の経済的負担…ジュニア年代に「遠征」は必要か? /指導者座談会5【9月特集】
- 練習も試合も1・2・3軍の技量別に分けるってOK?