スペシャリスト育成のためのクアトロゲーム。オランダで盛んに行われる練習の制約と調整【SSGs研究】

2024年03月28日

育成/環境

スモールサイドゲーム(SSGs)の一例としてスペインで行われている7対7のトレーニングのデザインメニューをこれまで取り上げてきた。今回はオランダで盛んに行われているスペシャリスト育成ためのSSGsを『サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門』より一部抜粋して紹介する。

著●内藤清志


スペシャリストの育成に適したクワトロゲーム

 数字の4を意味する“クワトロ”という言葉の通りに4対4が基本ですが、そこにゴールキーパーも付けた形で行われることが多いものです。古くからオランダで行われており、キッズや小学生などの子どもたちだけではなく、大学生やプロの選手でもコンディションの調整として取り入れることがあります。基本的にオフサイドのルールは設けないのが特徴です。

 コートは“ダブルボックス”と呼ばれるペナルティエリア2つ分(縦33m × 横40.32m)の横長のサイズになりますが、チームや個人のレベルによって、コートサイズやゴールサイズを調整するとよいでしょう。

 4人のフィールドプレーヤーは、深さ(縦)と幅(横)を意識するようなポジションをとるようにします。選手が互いにマークの選手とボールを同一視するためには、攻撃時に相手選手より外側にポジションをとることが基本となるからです。

 センターフォワード(トップ)とセンターバックがいて、2列目の選手はサイドに張ります。ダブルボックスのコートでは動き回るプレーではなく、サイドの選手は相手のサイドの背後をとるようなプレーになりますし、トップやセンターバックは1対1のシーンが中心となります。ゴールキーパーを付けた5対5にすれば、ゴールキーパーとセンターバックでボールを回しながら、サイドやトップにボールを入れるタイミングをうかがうようなことも自然と発生するでしょう。

 よくあるルールの設定は、初期の段階では、ゴールキーパーのシュートを禁止という“制約”を設けます。ゴールキーパーがシュートを打てるようにすると数的優位な状態になってしまうからです。

 ダブルボックスのコートサイズなので、縦が短く、ほぼゴール前のシーンになります。ゴールキーパーがシュートを打てないことで、フィールドプレーヤーは対面の相手とマンツーマンになるようにして動きではずさないといけないような設定となります。そうすると、相手の背後に入っておいて相手が見よう とした瞬間に顔を出すような動作や、相手の重心の逆をとるような動きで相手をはずしてボールを受けるようなプレーがされるようになってきます。パスの距離がそれほど遠くないので、ボールを受ける選手が相手をはずした瞬間にパスを出すというような、ボールを出すタイミングを掴むには最適です。

 注意したいのは、1対1の状況が連続するクワトロゲームは負荷が高くなるということです。

 ゲーム1本の時間設定は、競技レベルの大人であれば90から120秒です。それでもかなり負荷はかかります。

 子どもであればそこまで負荷はあがらないかもしれませんが、1本の時間を長くするのではなく、4分から5分を目安にレストを入れ、その分本数を増やすようにしましょう。

 ゴール前での局面ですので、シュートが多く飛び交います。負荷を上げたいトレーニングと考えるのであればマルチボールにできるよう、ある程度ボールの個数も必要であると考えられます。

 このようなクワトロゲームの特徴から、利点はスペシャリストの育成に向いているということがあげられます。サイドでの1対1であったり、センターフォワードとセンターバックとの勝負であったり、どのポジションであれ1対1の攻防を避けることができないからです。

 その結果、クワトロゲームが盛んなオランダの代表では、古くから優れたプレーヤーが育っています。ウイングのマルク・オーフェルマウスやアリエン・ロッベンをはじめ、ボウデヴィン・ゼンデンはサイドハーフやサイドバックのスペシャリストです。巧みなストライカーであったパトリック・クライファートや世界最高レベルのディフェンダーとして名高いフィルジル・ファン・ダイクなどもあげられます。


全文は『サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門』からご覧ください。


【商品名】サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2024/03/14

【書籍紹介】
エコロジカル・アプローチにもつながる本質的なサッカーコーチングバイブル

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