「褒める」ことから始める言葉かけ。大阪市ジュネッスFCのハーフタイムで見たもの/ジュニサカ取材日記③
2018年12月27日
メンタル/教育取材・写真・文●中澤捺生
まずは褒めること
12月26日(水)、鹿児島ふれあいスポーツランドにて「第42回全日本U-12サッカー選手権大会」の1次ラウンドがスタートしました。
同大会に大阪府の第2代表として出場しているのが大阪市ジュネッスFC(以下、ジュネッス)です。
ジュネッスは今年の8月に開催された「JFAバーモントカップ 第28回全日本U-12フットサル選手権大会」で初の日本一に輝きました。それだけでなく、「ダノンネーションズカップ」ではベスト8、「ワールドチャレンジ」では予選リーグで敗退したもののJクラブの育成組織を相手に互角以上の戦いを演じています。
取材でジュネッスの試合を見る機会が多かったのですが、どの大会でも共通していたのは試合に出場している全員が「自信に満ち溢れたプレーをしていた」ことです。
その理由はどこにあるのか? その答えは、ジュネッスの清水亮監督による言葉のアプローチにありました。
大会1日目の第一試合、ジュネッスは石井FC(徳島県代表)と対戦しましたが、「ピッチに慣れてなくて緊張もあったのか、前半は体が固かったです(清水監督)」と、得点を奪うことができず、前半終了のホイッスルが鳴り響きました。
下を向いて、ベンチに歩いて戻ってくるジュネッスのメンバーに対し清水監督は満面の笑顔でハイタッチをかわし、一人ひとりに前向きな声をかけていました。
そして、ハーフタイムの様子を少し覗き、清水監督の話を聞いていると、あることに気が付きました。それは、選手に言葉を伝えるとき、まず先に「褒め言葉」を入れていたことです。
「〇〇(名前)、前半のプレーはすごい良かったぞ!でも、後半はもう少しDFの裏に抜け出す動きを増やしていこうか!」など、まず選手を褒めてから後半に向けての修正点を具体的に話していました。
そのことについて清水監督に話を聞いてみると「まずは選手を『褒める』こと。これはチームのスタッフ全員が意識していることです。一、厳しいことを話すのであれば、三、褒めてあげる。それは常に心掛けています」と教えてくれました。
ジュニアサッカーの現場では怒鳴り続ける指導者はまだまだたくさんいます。「なんでトラップミスしたんだよ」「なんでシュート外したんだよ」と、前半に起きたミスの理由をハーフタイムのときに問い続け、子どもたちに怒りをぶつけている指導者は少なくありません。指導者の言葉によって明らかに「自信」をなくし、肩を落としたまま後半のピッチに向かう選手の姿をこれまで何人も目にしてきました。
「なんであんなプレーをしたんだ?」とハーフタームに前半のミスを否定することから始めるのではなく、清水監督のように、まずは、子どもたちのプレーを素直に褒める。そして、後半に向けての改善点を話す。そうして伝えられた言葉は子どもたちの心にスッと入っていくのではないでしょうか。
話は戻りますが、ジュネッスは石井FC戦の後半、4ゴールをあげ快勝しました。ハーフタイムに話した清水監督の言葉が選手たちの「自信」に変わったことが、攻守にリズムを生み、結果的に「ゴール」へとつながっていきました。
「試合のときだけではありません。最初に『褒める』ことは練習のときでも意識しています。あとは、言葉の選択、話し方、トーンなどは大事にしています。今、話すべきタイミングなのか、この選手にはどんな声をかけてあげるのがベストなのか、あえて、何も伝えないときもあります。かける言葉は選手の表情を見て変えていっています」(清水監督)
続く、第2戦の柏レイソルU-12(千葉県代表)戦、ジュネッスは1点ビハインドで前半を折り返します。ハーフタイムの話を聞くことはできませんでしたが、清水監督はジュネッスの選手を笑顔で後半へと送りだしていました。後半のピッチに立った選手の表情からは「ゴールを奪ってやるぞ!」という気持ちが伝わってきます。そして、CKから9番・増井那月くんがヘディングで同点弾をあげました。その後、ゴールを奪われ、敗れてしまいましたが、全国大会の舞台でもジュネッスの選手たちの「自信に満ち溢れたプレー」を見ることができました。
選手たちの「自信」の背景にあった清水監督による言葉のアプローチ。「褒める」ことから始める言葉がけは、指導者を問わず、サッカー少年・少女を持つ親御さんにも、是非、意識してほしいです。
今日行われた第3戦でアリーバFC(宮崎県)に3-0で勝利し、首位で1次ラウンド突破を決めたジュネッス。清水監督の言葉によって手にした「自信」を胸に、日本一を目指します。
【特設ページ】JFA 第42回全日本U-12サッカー選手権大会【取材日記】
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