夏のスポーツ活動を再考する。議論すべき問題点は?
2019年07月10日
育成/環境5月中旬に、朝日新聞が「東京都少年サッカー連盟が夏の公式戦を禁止する」という内容のニュースを報じた。その後、連盟側が「正しい報道ではない」と抗議し、訂正記事を依頼して後日スポーツ欄に記事が出ることになった。連盟側の言い分としては、「夏季休暇の間の公式戦は基本的に行わない。猛暑期間に試合を実施する場合は猛暑対策をきちんととり、熱中症対策のガイドラインに沿って行うこと」とのことだったが、サッカーに限らず、昨今の猛暑が続く中での「夏のスポーツ活動について再考するいい機会だったのではないか」と思う。そこで、7月の特集は「夏のトレーニングを見つめる」と題し、学校リスク(スポーツ事故、組み体操事故、転落事故、体罰、自殺、2分の1成人式、教員の部活動負担・長時間労働など)をテーマに研究発表されている名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良准教授と、文武両道を掲げて全国大会でも素晴らしい結果を出している國學院久我山高校サッカー部の清水恭孝監督の二人を取材した。研究者から見た意見、そして、現場指導者は実際にどういう取り組みをしているのか。ぜひこの機会に、夏のトレーニングについて考えるキッカケにしていただけたらと切に願う。
【7月特集】夏のトレーニングを見つめる
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部
「学校管理下の熱中症死亡事故の推移」(左)
「スポーツ部活動の種目 学校管理下の熱中症死亡事故」(右)
(参考=日本体育協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」)
夏のスポーツ活動の自粛をどう考えるのか?
――5月中旬、朝日新聞が「東京都少年サッカー連盟が夏の公式戦を中止する」という内容のニュースを報じました。先日、杉並区で行われたスポーツシンポジウムで内田先生の講演を聞いた際に部活動の問題に触れていらっしゃいましたが、私自身はものすごくリアルな問題だと感じています。先生が昨年の夏に書かれた記事「どうすべき? 真夏の教育活動 小一男児熱中症死から考える」を読んでも部活だけでなく、学校活動においても夏の活動はしっかりと考えていくべき問題だと思います。率直に、東京都少年サッカー連盟の発表を内田先生はどう思われますか?
内田「本当に『どうして、こんなことができたのだろう』というのが不思議でならないのが率直な感想です。相当、すごいことですよね。夏の大会をなくしてしまったら、スポーツ活動の土台から壊すくらいの勢いですから」
――東京都は全国的にいうと、チーム数が圧倒的に多いんです。大阪でも400くらいしかないんですけど、東京は800~900くらいのチーム数があって断トツのチーム数です。要は、そういう地域がその決断をするというのはものすごいことです。その期間中はあらゆる予選が止まってしまいますから。
内田「グラウンドがいろいろと空きそうですね。そこで、中学生たちの部活をしたりとか…。なんか違う意味で、嫌な予感もします」
――当然、メリットとデメリットはあると思います。
内田「もちろん子どものためとか、いろいろあって『基本的に中止』ということなんでしょうけど、その議論の内容を知りたいですけどね。ただのマイナスだけじゃなく、『ギリギリ、これだけは確保しよう』みたいな感じで、どう妥協していったのかなというのは非常に気になります。そもそも学校の部活、あるいは少年スポーツというのは大会を中心に回っています。逆に大会をなんとかすれば、一気に変わっていくと思うんです。本当に、大会は各スポーツにとって肝だと思いますから、そういった意味でもよくやったな、と。
『1~2月だけ禁止します』だったら第一歩だなと思いますけど、東京都少年サッカー連盟の決断は十歩くらい進んじゃった感じです。だから、その波及力はすごく大きいだろうなと感じる一方で、その議論のプロセスを知りたいという思いがあります。というのも、反発がものすごく大きかったはずですから。
新潟県加茂市は、昨年度、夏休み期間中の部活を中止にしたんですよ。去年はかなり暑かったとはいうものの衝撃的な決断でした。『8月の部活…いくらなんでもやめる?』みたいな。でも、その後に、また新しい展開がありまして、統一地方選で市長選があり、その争点のひとつが『部活』でした。それで結果的に“夏休みの部活を復活させる”という意見の市長が当選し、先日のニュースで「部活やります」ということになったようです。
私も、別に『全廃にしろ』とは思わないですが、せっかく第一歩を踏み出したのに、それだったら夏だけやめて、他のシーズンにしっかりとやればいいわけです。でも、なぜもう一回過去に戻すかな、という。これからがすごく心配です」
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