スペイン流ストライカー育成術 ゴールを決められる選手をどう育てる?
2014年05月16日
コラム5月13日に発表となったブラジルW杯スペイン代表のメンバーには、6人のFWが選出された。ビジャ、トーレス、ジョレンテなど様々なタイプのストライカーが名を連ねるスペイン代表。そこで今回は、そのスペインではどのようにして「ゴールを決められる選手」を育成しているのか。『サッカーの新しい教科書』の著者・坪井健太郎氏にお聞きした、スペイン独自の育成術をご紹介します。
文●小澤一郎 写真●Getty Images
※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.32春号』P036-040より転載
スペイン人と日本人のゴールに対するメンタリティの違い
現在のスペイン代表にはネグレド、ビジャ、フェルナンド・トーレス、フェルナンド・ジョレンテ、ジエゴ・コスタなど様々なタイプのストライカーがいるが、日本のストライカー育成の土壌と比べてどこがどう違うのか。
それについて坪井氏は「スペイン人と日本人で、点を取ることに関しての一番の違いというのは、やはりメンタリティの部分です。スペイン人は点を取ることの重要性をすごく大事にしていて、ゴールに近い選手は『自分が点を取らなければ評価されないし、チームも勝てない』ということを肌で分かっていますし、だからこそ少し難しいシーンでも積極的にフィニッシュにつなげていこうとトライします」と説明する。
もちろん、日本人も点を取ることの重要性を理解しているし、前述の通りストライカーが生み出される土壌やメンタリティも少しずつ育ってきている。
しかし、坪井氏はメンタリティが生まれる理由の違いについてこう続ける。
「スペイン人のメンタリティが生まれる理由は、やはりリーグ戦であり、毎年選手が入れ替わる育成環境です。彼らは年齢やカテゴリーに関わらず、結果を出さなければ翌年の居場所がなくなってしまいますし、上にステップアップすることもできなくなってしまう環境があります」。
もちろん、スペインと日本の違いというのは、メンタル面だけではなく、テクニック面でも見ることができる。
坪井氏は、「Jリーグの試合では、ロングシュートや相手と対峙した状態での切り返しシュートなどからのゴールが多いですが、スペインリーグや欧州の試合を見ていると、流れの中からのゴールは背後に抜け出してフィニッシュに至るゴールが大半を占めています」と述べる。
その違いについて坪井氏は「日本人の方がゴールの取り方を知らないのかもしれません」と推測する。
「一番ゴールを取れる場所というのは、ディフェンスの背後です。そこでボールを受けて、フリーでシュートを打てる状態がゴールを取れる一番“おいしい”場所ですが、日本人の試合を見ると相手ディフェンスの手前に無理矢理入り込み、足元でボールを受けて、相手を引きずるようにターンをして強引にフィニッシュに行こうとする形が多い印象です。最近の日本人ストライカーでは佐藤寿人や大迫勇也のようにマークを外す動きで背後に抜け出すのが上手い選手が出てきましたが、彼らのような選手がもっと出てくるべきです」。

(写真●Getty Images)
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