畑喜美夫×幸野健一 両氏が語る、いまサッカー界の育成に必要なこと -“選手が主役”の指導法「ボトムアップ理論」が子どもの自立を促す!-(後編)

2013年10月09日

コラム

安芸南高校サッカー部監督の畑喜美夫氏と、Jリーガー・幸野志有人選手(現・V・ファーレン長崎)の父としても知られ、サッカー界の育成における問題を解決すべくサッカー・コンサルタントとして活動する幸野健一氏の対談企画。前編に続き、後編を紹介する。

文●小澤一郎 写真●編集部

 

前編はこちらから


子どもたち自らが未来を切り拓いていく

――「子どもの可能性は無限大」だということは多くの指導者が頭では理解していると思いますが、本当の意味で子どもを信頼した指導法は少ない印象です。

畑氏 勝てる方程式というものはなくて、もし勝てる指導論があれば皆が日本チャンピオンになりますし、勉強に関しても皆が東大に合格します。要するに、私たち指導者は単純に勝利する確率を上げるために指導しているわけです。(前編の話にも出た)選手権ベスト4のかかった試合に関しては、修正点を言わなかったから負けてしまったというよりも、残り時間を選手たちと一緒に戦ったということの方が、私にとっては重要です。最終的に私の助けを借りずに自分たちで戦った経験があれから4年経ってどのように生きているのかを考えると、彼らにとってすごくプラスになっていると思います。広島観音時代の教え子たちは例えば会社の経営者、学校の先生になっている子が多く、逆にニートになっている卒業生は一人もいません。一応、初蹴りの時などに卒業生の現状を調べて、全員のデータはパソコンの中に入れて把握しています。選手権のベスト8で敗れ国立の舞台に届かなかったとしても、今社会に出るスタートラインのところで言うと、1つ上に行けているという気はします。そう考えれば、この5年、10年後の勝負としては勝てているのだと思います。

――我々メディアも含めて、「インターハイ優勝」、「プロ何名輩出」といった目先の結果ばかりでなく、継続的に「そういう指導を受けた選手が今どうなのか」を見て、評価していく姿勢が必要ですね?

幸野氏 大事なことだと思います。私自身、ある意味自分の子どもで究極のボトムアップを実践しました。息子(幸野志有人/現長崎∨・ファーレン)は12歳で家を出て、本当に必要な時、向こうから手を差し伸べて欲しい時には手助けをしましたが、そうではない時はほとんど全て自分で解決してきました。16歳でプロになりましたが、一度だけプレーの内容について電話がかかってきただけですから。やはり子どもというのはすごい潜在能力を持っていて、大人である私の感覚の何倍もの能力を持つ存在であると思います。その芽を育てるには我慢強く待ってあげることがとても大事だと自分の子どもを見てつくづく感じますし、私自身もその姿から学ばせてもらっています。

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