難民でストリート育ちの苦労人モドリッチが”世界最高のMF”になれた理由
2018年06月22日
サッカーエンタメ最前線生き残るためにモダンなMFに成長
十代のモドリッチは典型的な10番タイプだった。しかし、二度の貸し出しを経てハードワーカーとしての資質も身につけていく。身長174センチと長身のクロアチア人の間では小柄で細身だったが、運動量もあり守備も上手かった。クロアチア代表でもいわば特権階級的な扱いだったクラニチャールと違い、モドリッチは生き残るためにモダンなMFに成長していく。
守備的MFもやればサイドハーフもこなし、攻守万能のプレーヤーになっていった。スパーズを最後にクラニチャールは表舞台から消えていく一方、モドリッチはレアル・マドリーの10番として君臨している。時代の流れに適応する能力が2人の差につながったように思える。
容姿とプレーの雰囲気がヨハン・クライフによく似ている。右足のアウトサイドの使い方やフィールド全体を俯瞰するゲームメーク、柔らかだがキレのある動き、何となく悲しそうな顔つきも。クライフはモドリッチほど苦労人ではないけれども、時代の要請に適応したことがスーパースターへの道を拓いたのは共通点だろう。
レアル・マドリーでも最初からレギュラー扱いというわけではなかったが、あるときは中盤のコンダクターとして、あるときはハードワーカーとして貢献し、いつしか不可欠の存在になった。リバプールの監督などを務めたジェラール・ウリエは「周囲の選手を上手くプレーさせる」とモドリッチへ最大級の賛辞を贈る。技術と知性に優れ、攻守に働くハードワーカーとして、やはり同じような境地にたどり着いたトニ・クロースとともにレアルを牽引する。
興味深いのは、クロアチア代表におけるモドリッチは4-2-3-1のトップ下として、10番の役割を任されていることだ。クロアチアのMFにはイヴァン・ラキティッチ、マテオ・コバチッチという 10番タイプのチームメートがいる。ところが、この3人ともキャリアの過程でハードワークを覚え、今ではラキティッチとコバチッチが脇役として機能するのでモドリッチがより攻撃力を発揮できる役割に収まっているのだ。
旧ユーゴスラビアは天才的なボールプレーヤーの宝庫だ。ドラガン・ストイコビッチやサフェト・スシッチ、ズボニミール・ボバン、ロベルト・プロシネツキらの系譜は現在にも引き継がれている。だが、現在のクロアチアを支えているのは直系ともいえるクラニチャールではなく、モドリッチを筆頭とするハイブリッドMFたちなのだ。
<関連リンク>
・【特設ページ】2018 FIFAワールドカップ ロシア
・ただうまいだけじゃない。ルカ・モドリッチのチームにスイッチを入れるプレー
<プロフィール>
ルカ・モドリッチ(クロアチア/レアル・マドリー)
1985年9月9日生まれ、クロアチアのザダル出身。ディナモ・ザグレブでリーグ年間最優秀選手に選出されるなど活躍し、2008年にプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに加入。2012年からレアル・マドリーでプレー。同クラブでリーグ戦、UEFAチャンピオンズリーグなどのタイトル獲得に貢献。
【商品名】PERFECT SKILL パーフェクトスキル 世界トッププレーヤーの究極スキルを解説する
【著者】西部謙司
【発行】株式会社カンゼン
四六判/256ページ
2018年6月5日発売
【新説プレーヤーズファイル】
欧州サッカーを進化させる超一流たちの技術×戦術眼 ワールドクラスの選手ほどプレーを整理し、ごくシンプルなサッカーを完璧に体現する。メッシ、ネイマール、イニエスタ、レヴァンドフスキ、コウチーニョ、モドリッチ、ディバラなど一流のプレーヤーたちはなぜ欧州で輝けるのか。独特なサッカー観で戦術を紐解くサッカージャーナリスト・西部謙司が軽妙に解き明かす!
>>ジュニサカ公式facebookはこちら
>>ジュニサカ公式Twitterはこちら
>>ジュニサカ公式Instagramはこちら
>>ジュニサカ公式Youtubeチャンネルはこちら
>>ジュニサカオンラインショップはこちら
カテゴリ別新着記事
ニュース
-
「2025ナショナルトレセンU-14前期」参加メンバー発表!2025.05.18
-
「女子GKキャンプU-15」参加メンバー発表!2025.05.15
-
【JFA/Jリーグポストユースマッチ 関西学生選抜戦】U-22 Jリーグ選抜メンバー発表!2025.05.12
-
U-15日本代表、クロアチア遠征参加メンバー発表!2025.05.08
フットボール最新ニュース
-
近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.24
-
「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.24
-
【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.24
-
リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.24
-
前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.24
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- 「2025ナショナルトレセンU-14前期」参加メンバー発表!
- かつて“怪物”と呼ばれた少年。耳を傾けたい先人の言葉
- 出場機会をどう生み出すか。「3ピリオド制」のメリットとデメリット【5月特集】
- 低学年と高学年の食事量の違いは?/小学校5・6年生向けの夕食レシピ例
- 1対1はサッカーじゃない!? 池上正コーチが語るトレーニングの在り方
- 東北トレセンU-13が開催!
- 『JFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12』2016年度の参加メンバー768名を発表
- 長期離脱中に中心選手じゃなくなった
- 【第37回全日本少年サッカー大会】広島県大会 決勝レポート「両チーム最後まで戦いぬいた試合はPK戦の末、サンフレッチェ広島FCjrが優勝!!」
- 知っておけばひと安心! 子どもの喘息攻略法【前編】