“良いトレーニング”の条件は?サッカーにおけるコミュニケーションは「共通理解」【10月・11月特集】

2018年11月30日

サッカー練習メニュー

BEIJING, CHINA - JULY 24:  Manchester City's manager Pep Guardiola gestures during the pre-game training ahead of the 2016 International Champions Cup match between Manchester City and Manchester United at Olympic Sports Center Stadium on July 24, 2016 in Beijing, China.  (Photo by Lintao Zhang/Getty Images)

指導者が選手にアプローチすべきは「頭の部分」

――最近は言語化やサッカー用語の定義化が一人歩きしています。どこまで切り取って分解するのか。でも、先読み能力を鍛えるようなトレーニングは分解しているわけではありません。大切なことは、プレーに必要なものがしっかり組み込まれたトレーニングになっていることです。

濱吉「先読みは攻める方向と守る方向が要素として組み込まれていないと考えられないことだと思います。私も今流行りのポジションプレーの練習はしますが、攻撃方向を決めないトレーニングは行いません。もちろん決めないものもあります。ただ、それは連続してボールをキープする感覚を養うために行うものです」

――頭を鍛えるものなのか、チーム戦術にまで紐づけられたものなのか。この部分は指導者の中で整理されている必要があります。私も地元福岡に帰省した時に強豪校の練習を見たりします。ポゼッションのトレーニングでよく感じるのは「単なるボール回しで終わっている」ことも多いことです。濱吉さんが言われた通り、攻撃方向が決まっていないトレーニングは感覚をつかむためのものです。それって認知能力を上げるだけのトレーニングですよね。攻撃方向が加わらなければチーム戦術=共通理解にまでは落とし込めないのではないでしょうか。

濱吉「攻撃方向がゴールなのか、ラインゴールなのか、スペースなのか、いろんな設定の仕方があります。ただ、大事なことは『何を選択していくのか』です。トレーニングで『何を選ぶのか』を繰り返し行うことは非常に重要です。ただし、高校生や大学生の試合を見ていて『おかしいな』と思うのは、カウンター主体のチームの監督が『ボールを大事にしろ』『しっかりとつなげ』と声を荒げていることです。まず、日頃からそういう練習をしているのか?そもそもチームの戦術がカウンター主体であればポゼッションを高めるトレーニングは必要なのかということです。キック&ラッシュがチームの戦術であれば、それに従ったトレーニングをしていけばいいだけですし、その方が勝利への効率性は高められるわけです」

――ボールが頭を飛び交っているチームの方が攻める方向が決まっているから明確です。セミナーを聴講していて共感した一つに「失敗してもいいから思い切って実践すること。そうしないと発見につながらない」と言われたことです。発見には行動が同居していて、それに尻込みしていても「何が悪いのか」が見つけられません。そして、指導者が選手にヒントすら与えず、ゼロから「考えなさい」というのは、その指導者自身に考えやアイディアがない証拠にも思えます。そういう点では、参考映像で使っていたミハイロ・ペトロヴィッチ監督が選手たちに対して具体的にどうすべきかを伝えていらっしゃったのは印象的でした。明確なプレーモデルがあるからこその指導だったと思います。

濱吉「鮨屋で例えると、10年も修行しているのに仕事を覚えない職人がいるわけです。見て覚えろと言っているわけですが、それでは乗り越える職人しか生き残れない。それだと確率が悪いから、サッカー界では指導を含めて様々なことを言葉にして論理的に進めているわけです。しかし、指導者には職人的な学び方、師匠が行う手順や店の歴史など鮨職人としての文化を背中に学ぶことも大切です。成功を収めているペップ、モウリーニョ、ナーゲルスマン、ポチェッティーノらの成功を収めている監督たちは、コーチングスクールで理論とは別に、誰かのもとで職人的な方法でも学んでいます。そう考えると、日本で行なわれている指導は感覚的です。

『感じろ』。
『考えろ』。

 本当に、抽象的な言葉が飛び交います。何を考えるか。まず、前に向かうだろう。『ゴールからのアプローチだろう』と。例えば、ゾーンを区切ればボールを持っている選手はどうするのか、ボールを持っていない選手はどうするのか。指導者が選手にアプローチすべきは、準備という頭の部分です。それをダイナミックテクニックでいうと『反応』だと捉えています。パパッと動く。日本では決まりきったことだから儀式的に行なわれています。

 少し前に、あるチームが試合前にトレーニングを行っていました。いいチームだったのですが、ウォーミングアップを儀式のように大声でやっていました。確かに彼らは規律正しくやっていますが、それがプレーの自立に繋がっていないように感じました。試合前にアプローチすべきは頭と体に刺激を与え、連結させて準備をしなければならないんです。彼らは監督に提示されたパターンの中でしかプレーできないから、それがなくなると動けない場面も多々ありました。自分たちのサッカーができない時の対応力が足りないように感じました。つまり、実は弱いんです。自己責任で考えられない、やらされているからその先に燃え尽き症候群に陥ってしまうのです」

――そこはバランスが大事です。わからなかったら答えを提示しながらも混乱したら「君だったらどうする?」と、その都度状況を説明してあげる必要があります。

濱吉「私自身は『良いところ取り』だけでは成長できないと思っています。職人的な学びで言えば、一連の手順と文化を学びます。ムダに思われる雑巾がけも一生懸命やらないと身につかないことがあるからです。答えを提示するのも頻度とかタイミングとか、どういう手順でどう教えていくかは考えなければなりません。基本的な手順(=トレーニングの原則など)を正しく保っていれば、あとは指導者が選手のプレーに対する反応に集中できるので楽だと思うんです」


<プロフィール>
濱吉 正則(はまよし まさのり)

1971年7月5日生まれ。UEFA公認プロコーチライセンス所持(JFA 公認S級コーチ相当)。大学卒業後の1995年にスロベニアへコーチ留学。帰国後は名古屋グランパス、徳島ヴォルティス、ギラヴァンツ北九州などでコーチを務めた。2016年にSVホルン(オーストリア)の監督に就任。現在は九州産業大学サッカー部の監督として活動している。


 

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