日本の子どもたちに必要なものは「余白」であることを大人たちはわかっているようでわかっていない【サッカー外から学ぶ】
2018年12月20日
コラム
【自由に外で遊ぶ子どもたち(写真提供●橋井健司さん)】
子どもたちを低く見すぎていないか?
「自由時間、休養、留年もそうですが、子どもたちにはとにかく自由を与えることが重要です」
橋井さんは、大人によって型にはめられてしまった子どもたちが、自分で考えて行動する力を失っていることを危惧している。
「なぜ自由を与える必要があるかというと、それは『自分で自分を伸ばせる方法』を身につけるためなんです。決められたこと、周囲と同じこと、大人が教えてくれることをこなしているだけの子どもはこれからの時代に生き残っていけません」
自分で自分を伸ばす方法とは、子どもたちが主体的に考えながら行動していく方法に他ならない。親であれ指導者であれ、子どもたちだけではできないから文字どおり保護のために保護者として関わらなければいけないと思いがちだが、子どもたちは十分、自分たちで学びながら成長していく方法を探すことができると橋井さんは言う。
「うちの園でもやっているんですから、小学生は十分できますよ。むしろ12歳までに自分で自分を伸ばす方法をしっかり身につけないと中学生、高校生になったときにとても困ることになります」
橋井さんが子どもたちだけでもできるという例として示したのは、自由時間で目にした光景だった。
「例えば、鬼ごっこです。高いところにいる間はタッチできないと言うルールでやっていたようなんですが、大人が何も言わなくても、どんどん役割をチェンジして、ルールも自分たちでどんどん変えて行くんですよ。子どものことだからいじめのように偏ったルールになることを心配する方もいるかもしれませんが、子どもは自分たちが面白いと思うことしかしません。だから、むしろ公平なルールができていくんです。誰かが圧倒的に負けたり、一人だけ勝つようなことがないように自分たちで工夫しているんですよ」
サッカー指導でも教える過ぎることと放任、受け身と自主性の「ほどの良さ」は頻繁に話題に上るが、橋井さんは大人が教えなければいけないのは「物事のやり方や上達法」ではなく、「自分で成長するための方法」だという。
「まっさらな子どもたちは何も教えなくてもそれができる。子どもに任せる場合は、大人の側に予定を変更する力が必要です。教える側としてはこういうことを予定していたけど、子どもから提案があったら柔軟にそれに対応できるようにしておく。子どもの提案はバカにできないどころか本質を突いているんですよ」
幼児教育を主戦場にしている橋井さんにこう言われては、ジュニアサッカーの現場で「子どもたちには早すぎる」とは言えない。
「練習でもなんでも、プログラムをまるごと人に委ねているというのは、自己管理を他人任せにしているのと同じなんですよね。こうしたメニューづくりをすべて大人に委ねていれば、社会に出たときに自主性がないと言われるのは当たり前のことです。子どものうちに『自分はどんな状態になれば集中できるのか』『どういうやり方で伸びていけるのか』を試行錯誤しながらつくっていく。そういう子どもがこれからの時代に伸びていける子です」
次回は、これもサッカーに大いに関係する勝利至上主義と競争意識についてお送りする。
<プロフィール>
橋井 健司(はしい けんじ)
保育士・研修指導講師。静岡県出身。1993年から2006年まで外資系企業でオーガナイザーとして活動。2007年1月、新教育デザイニング株式会社設立し、同年3月には幼児園First Classroom世田谷を開園。異年齢教育を特徴とした独自のカリキュラムに基づく保育を実践し、2019年4月には世田谷・梅ヶ丘に新園を増設し、大阪府での開園も計画している。著書に「世界基準の幼稚園 6歳までにリーダーシップは磨かれる」がある。
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