「全員出場」という言葉だけが一人歩きしていませんか?
2019年02月11日
コラム
【シュタルフ悠紀リヒャルト氏は2019年シーズンからプロチームの監督を務めながら日独フットボール・アカデミーなどでジュニア年代の指導にも携わる】
短い出場時間では指導者も評価できない
――シュタルフさんのルーツはドイツにあることもあり、ドイツの指導者ライセンスもお持ちですよね。ドイツ国内の出場時間に対する考え方はどうなんでしょうか?
「育成を重要視しているアカデミーであれば全員の選手を出場させていると思いますが、ドイツにも色々なクラブがあるので指導者の中には『どうしても勝ちたいから』と、メンバーを固定する指導者も存在します。ドイツだから良いとか、日本だから悪い、というわけではない。真剣に育成をするのであれば、譲れないポイントがあります」
――譲れないポイントというのは出場時間40%以上ということですよね。ただ国に関係なく『選手全員を出場させているよ(5分だけだけど……)』と主張するクラブもあると思います。そこで悠紀さんに伺いたいのは『なぜ5分じゃダメなんでしょうか』ということなのですが。
「それはサッカーをプレーしたことがあって、最後の5分だけ出場した経験がある人であれば分かると思うのですが、サッカーの5分ってあっという間なんです。単純にボールタッチ数をカウントしても、運が悪かったら1タッチもしないまま終わってしまうこともあります。
ただ今、日本で行われているU-12年代の大会であれば基本的には15-20分×2で行われています。1試合15分ハーフとなると、前半5分と後半10分出場するという選手も中には出てきてしまうのが現実でしょう。でも固まった出場時間が5分では短いと感じています。
選手を『見る』、『評価する』という指導者視点で考えてみても、5分では難しい。余談ですが、例えばドイツには『キッカー』というサッカーの専門媒体があります。ブンデスリーガの全試合で選手の評価点を掲載しています。ただ、『キッカー』の評価基準は基本的に30分以上試合に出場した選手にしか評価がつきません。例外として短時間での出場でもゴールをあげるなど、試合を決定づける活躍をみせた選手は評価をすることもありますが、原則的には15分でサッカー選手は評価できないよ、という話なんです。2、3分出ただけでは僕らも評価できないですよね。
――日本サッカー協会の『大会ガイドライン』では「U-12年代の場合、15-20分×2としますが、同日2試合の場合は、1試合15分×2、1人のプレー時間は合計45分までとします」と明記しています。レコスリーグは倍の30分×2で運営されていますが、そこにはどういう意図がありますか?
「大人のサッカーは90分でやるものなので、前提としてそこにつながるように考えなければいけません。ジュニアユースの公式戦は35-40分×2になるのですが、U-12からU-13になったとき急に試合時間が倍以上になるのはどうなの? ということがひとつです。
サッカーというのは流れがあるスポーツで、サッカーの流れを生み出すためには時間が必要です。15分×2の試合時間で『強いチーム』になるのは、ポンと1回前にボールを運んで、前からプレッシャーをガンガンかけるチームです。U-12年代にもなれば30分全力でプレスをかけても体力は持ちます。しかし、これが30分×2だと体力的に厳しくなります。体力がなくなったときに、頑張って守れるチームにカウンターのチャンスが来たり……というのがサッカーの流れです。
全部が全部ハードに戦うだけでなく、ジュニア年代でもここぞというときにパワーを発揮することや『ここが踏ん張り所だ!』ということを選手たちが理解してサッカーをプレーする必要があります。
また、試合時間を考えながら選手起用をしているチームにはメリットがあります。例えばメンバーを固定して戦うチームの場合、30分×2の試合では選手の疲労度が試合結果に影響を及ぼしますが、選手交代を使ってフレッシュな選手を投入すれば、選手はフィジカル的な要素を落とさずにプレーがすることができ、チームの強度は落ちにくいですよね。
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