U14年代になっても“8人制サッカー”から脱却できないのはなぜか
2019年06月19日
育成/環境
局面だけの解決を考えると大局的に見られない
次に、図1の攻撃側の視点で話を進めたい。
『東京国際ユースサッカー大会』で優勝したブラジルのパルメイラスは、この位置でのビルドアップの質がとても高かった。それはボール保持者にとって周囲の選手が図1のように選択肢をしっかり作っていたからだ。そして、無理にボールを前進させるようなことはせず、安全にボールを運ぶためにGKを含めたビルドアップを行っていた。
基本的に、彼らの攻撃の優先順位は同サイド、CBやGKを活用したサイドチェンジ、中央の傾向が多かった。その中でもボールを保持したSBとSHという同サイドでの関係性が非常に優れていた。それは二人だけでボールを前進させていたという意味ではなく、彼ら二人は縦の関係性で相手守備を自分たちのサイドに集め、CHにプレースペースを作りながらチーム全体でハーフウェーラインを越えて安定的にボールを運べるように攻撃を構築することを意識していたからだ。
日本のチームだと、同サイドでの縦の関係は“突破”がかなりの割合で頭の中を占めている。サッカー関係者ですら、この段階から縦に前進することに意識が高く向いているように感じる。ただ、ブラジルを含めた他の国にとっては、同サイドでの攻撃アクションはハーフウェーラインを越える突破を達成するための手段のひとつ。それが難しかった場合には、安全なポジションを取っているCBやGKを通じて逆サイドに動かしながら徐々にボールを前に進める。
そして、そういう選択肢を持ちながらアクションを起こしているからこそ、中央にいるCHもプレースペースを作る時間ができ、さらに自分たちもその選手にプレースペースができたかどうかがとっさに確認できる。つまり、SBもSHもCHを意識に入れながらアクションをしているから中央を活用するタイミングを即座にキャッチできるのだ。彼らは、相手ゴール前に侵入するまではピッチ全体に広く意識を傾けているように思う。
そういう部分でも、日本チームが局面的にサッカーをプレーするのに対して、海外チームが大局的にサッカーをプレーできる要因かもしれない。
ボールを持った選手やその近くの選手が“相手陣内に入らなければ”という思いを植え付けられているのか、それともボールを持った選手もそれ以外の選手も“とりあえず相手陣内までボールを運ぼう。そこからシュートまで持っていこう”と思っているのかで随分とプレー的な視野の広がり方が変わってくる。それは個人でプレーしようとしているのか、チーム全体でプレーしようとしているのか、という大前提条件の違いから浸透していったことで生まれた差になっているのではないだろうか。
U12年代もそうだが、U14年代になっても狭い範囲でしか解決策を見出そうとしないのは、やはりサッカーがチームスポーツである根底的にあるものを指導者が伝え切れていないのではないか。それを証拠に、今大会のU14年代の日本チームのサッカーにはゲームメイクの時に作り直しの概念がとても薄く、前に進む一辺倒でプレーするシーンがあまりに多すぎた。
※6月の特集第4弾「U12・U14・U16を通して見えた育成の課題は?」は6月26日に公開予定です
>>ジュニサカ公式facebookはこちら
>>ジュニサカ公式Twitterはこちら
>>ジュニサカ公式Instagramはこちら
>>ジュニサカ公式Youtubeチャンネルはこちら
>>ジュニサカオンラインショップはこちら
カテゴリ別新着記事
ニュース
-
【第49回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会】出場チーム決定!2025.06.18
-
なでしこジャパン(日本女子代表)、国際親善試合(vsスペイン女子代表)と「E-1サッカー選手権」に臨むメンバー発表!2025.06.18
-
「エリート女子GKキャンプU-15」参加メンバー発表!2025.06.17
-
「東北トレセン女子U-13」が開催!2025.06.10
フットボール最新ニュース
-
近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.05.21
-
「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.05.21
-
【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.05.21
-
リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.05.21
-
前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.05.21
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- 低学年と高学年の食事量の違いは?/小学校5・6年生向けの夕食レシピ例
- 食べてすぐに運動しても大丈夫! 試合前にとりたい”消化の良い”食事とは?
- 東北トレセンU-13が開催!
- かつて“怪物”と呼ばれた少年。耳を傾けたい先人の言葉
- プロフットボーラーの家族の肖像『久保竜彦 ~本気で向き合うということ~』
- 栄養も食事量も“バランス良く”/小学校1・2年生向けの一日の食事例
- パスやシュートばかりでドリブルしない子ども
- 染谷先生のトレセン&セレクション虎の巻「パス&コントロール①」
- 【第94回全国高校サッカー選手権大会】高校サッカー選手のジュニア時代 北海道・東北
- 高校サッカーの名門、滝川第二高校の元監督が説く、育成哲学。『人の心を耕す』が発売!