“状況”と“やるべきこと”をセットにすれば「1対1」に強くなる
2019年07月08日
戦術/スキル
1対1のマトリクスから、具体的な状況とやるべきことを考える
講習会では、1対1の具体的な状況をワーキンググループで考えて発表しました。その結果、“攻撃”と“守備”が大分類となり、“エリア”(ゴール前、サイドなど)、“相手との距離”“相手の位置”“ボールの状況”がぶら下がりました。
【1対1の具体的な状況】
・攻撃と守備
・エリア:ジュニアではシンプルに伝えることを心がけ、横方向はサイドと中央、縦方向は前
線と自陣とする。
・相手の位置:背後、横、正面、斜め
・相手との距離:近い、遠い
・ボールの状況:前向きでボール持っているか、後ろ向きでボールを持っているか。
この“状況”から「1対1のマトリクス」をつくるとたくさんのパターンができあがります。けれども、実際の指導の現場では実践できる時間は限られています。
そこで「自分の教えているチームで、どうしても欠かすことのできない1対1のシーン」に照準を合わせて、1年間に練習できる分量に絞っていきます。選定した“状況”に対しては“やるべきこと”を理解し、さらに“やるべきこと”に求められる能力を整理します。シュタルフ氏は状況を絞るための大切なポイントとして「年齢特性を考えること」をあげます。
「ジュニア年代の子どもは攻撃が好きです。あまり守備にウエートを置いても、サッカーを楽しくやることや、ボールにたくさん触れる機会をつくるうえでマイナスになります。攻撃の練習のほうがボールに触れる回数は多くなるので、技術も自然と身につきやすくなります」
【1対1の具体的な状況とやるべきこと】
<状況>
中央での攻撃(相手の位置は正面、距離は遠い、前向きにボールを持っている)
<やるべきこと>
・相手に向かってドリブルしていくことで主導権を握る
・斜めに持ち出して抜きたい方向とは逆に相手を動かす
・なるべくスピードに乗る
・細かいタッチでボールを運ぶ
・相手との間合いを詰めて、相手が動いた瞬間に逆を突く
・相手を動かすためにフェイントを挟む
<求められるテクニック>
・細かいタッチのドリブル
・スピードドリブル
・ボールから顔を上げて運ぶ技術
・方向転換に必要なフェイント
<求められるフィジカル>
・細かいドリブルのためのアジリティ
・直線的に走るスピード
・素早い重心移動
・身体をぶつけられたときのバランス力
<求められるメンタル>
・ミスを恐れない強いメンタリティ
・ドリブルで仕掛ける自信
・駆け引きを楽しむ心
・相手の重心移動を見逃さない集中力
こうして選定した「具体的な状況とやるべきこと」をトレーニングに落とし込んでいくわけです。
座学の最後にシュタルフ氏は、トレーニングに対して大事にしている考えとして「トレーニングとはゲームに向けて準備をするものだと思っていますので、ゲームに近い状況をつくっています。また学習プロセスとしては段階が必要ですので、いきなり難しいものではなく、ステップアップしていくようにしています。あとは集中力が切れている状態での習得は難しいので、集中力が高い状況になるようなトレーニングの構築をして反復させています」と教えてくれました。
グループワークを中心とした座学のあとは、屋外のコートで、座学の例としてあげられた「中央での攻撃」を“状況”にしたトレーニングの実践が行われました。難易度のつけ方、子どもたちが飽きないような工夫の仕方、1対1のシーンで突破できても、それが偶然であった場合の戦術(遊び方)の教え方などがレクチャーされ、実践後にはイベントルームに戻って「振り返りの時間」も設けられました。
ところで、今回のシュタルフ氏の講義はこんなひと言から始まっていました。
「みなさんに、私の考えていることや注意していることを共有してもらうと同時に、みなさんからのアイデアや考えもこの場で共有して、お互いに今後のヒントが見つかるような時間にしていきたいと思います。いつ質問してもらってもOKです」
その言葉のとおり距離感の近い講習会でした。シュタルフ氏は「振り返りの時間」でも受講者の感想や質問に一つひとつ丁寧にコメントし、気がつけば終了予定時間を大幅にオーバーしていたのです。
現在、シュタルフ氏の率いるY.S.C.C.横浜はシーズン真っ只中です。そんな現役のJリーグ監督から近い距離で話を聞くことができ、受講者にとっては貴重な時間となったのではないでしょうか。シュタルフ氏の人柄とサッカーに対する熱い想いを感じることのできた講習会でした。
シュタルフ氏 新著『プレーヤータイプ別診断トレーニング』 1/19発売!
■シュタルフ悠紀リヒャルト氏インタビュー記事
・「全員出場」という言葉だけが一人歩きしていませんか?
・「技術的なエラー」だけで選手を評価してはいけない。“再交代”を有益に使うひと工夫
・「1対1」にも戦術が必要。シュタルフ氏が考える個の育成の定義とは
・本当のクリエイティビティは「型」から生まれる。状況と戦術はセットでなければ意味がない
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