日本人選手は…「もっと失敗を恐れずにプレーしてほしい」。イングランド人メンターが語る“指導者の責任”
2019年10月23日
育成/環境情報のコピーでは指導力は上がらない!
——日本サッカーでは、今、世界の情報があふれています。でも、その中で指導者たちがどの情報を信じていいか混乱しているような状態に陥っています。ある意味、JFAが具体的なものを発信する時期に来ているとも言えますが、なんだか右往左往しているような状態です。
ポール その情報をコピーしたところでよくはならないですよね。なぜならその指導者にとってリアルではないからです。先日、Jヴィレッジに行かせてもらいました。彼らは、まさに核となる部分を一度なくしてしまった状態です。グラウンドは駐車場になり、建物は事務所になり、国にすべてを提供しました。私は、だからこそJヴィレッジはどういう哲学を持って、どうプレーしたいのかをその自分たちが歩んできた道のりをプレーとして表現するのがいいと思うんです。
起こってしまったこと自体は不運だったかもしれません。でも、だから自分たちがやってきたチームワークや人助けを哲学として確立させ、プレーの仕方にまで落とし込んでやっていくのがいいのではないかと、個人として感じました。誰かのものをコピーするのはなく、アイデンティティは何なのか。それを確立させていくこと、そこからどうプレーさせたくて、それをプレーさせるためにどうトレーニングをするのかを考えていかなければいけない。
そこに尽きると思います。
——そうですね。少しイングランドのグラスルーツレベルの話を聞きたいです。日本でいうと「1日のトレーニングをどうすればいいのか」がわからない人がまだまだ多く存在しています。例えば、ジュニアで例えると発育発達を理解せずに無理な要求している指導者がいたりとか。そのあたりはイングランドではどうなのでしょうか?
ポール 一般的なことでいうと、教えた通りにしか指導できないコーチもたくさんいます。きっと、そのあたりは日本と変わらないのではないでしょうか。ただ、私が思うのは「指導する時点ですばらしいこと」だということです。だからこそ自分の抱える選手に責任があるのだと思います。では、その責任とは指導者として学んでいくことです。昔は試合の前に二列になってグラウンドを走らせることを行っていたけど、今それと同じことをさせていたら責任を果たせていませんよね。そういう面では、日本とあまり変わらない状況かもしれません。
——例えば、ジュニアの試合では公式戦のベンチ入り資格に「C級ライセンス」を持っていることが必須です。イギリスでは、そういうルールがありますか?
ポール 例えば、イギリスでは「チャータースタンダード」というクラブの決まりがあり、規律としては指導者がセーフガードや緊急措置の資格を持っていないといけないとか定められた項目があります。他にも、お父さんお母さんが子どもたちを見るところが決まっていたり、写真撮影が禁止であったり…選手を守るためにイングランドFAからクラブに課されたルールがあります。それを満たしているとどうなるか? 例えば、サッカーボールが支給されたりなどいろんな補助が受けられるような仕組みになっています。クラブもただビブスをもらえるから決まりをつくって取り組むのではなく、それを満たさないとリーグに参加できなかったりするので真剣に前向きに考えています。
——それはすばらしい。日本とは、全く価値観が違いますね。例えば、イングランドFAの日本でいうC級ライセンスを取得する時にどういったことを学ぶんですか?
ポール どう気づけるか。どう学ぶか。能力の違いをどう見るか。選手について学ぶような内容です。これはイングランドFAのホームページに項目が掲載されています。
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